うさ耳くんと、戦いと、別れと ①
ノアレがまたやってくる日がやってきた。
俺も七歳を迎えている。その間に俺も耳の強化の魔法をひたすら練習し続けた。少しずつ結果は出ていると思う。
村の人たちには相変わらず変なことをやっているなと、そういう目で見られてしまうけれどまぁ、気にしない。
そもそも俺の村の人たちは俺が昔から変なことばかりやっているから、俺が変なことをやるのにもすっかり慣れてしまっているし。
そういうわけで俺はせっせと自分で耳の強化を進めていたわけである。
それにしてもノアレがくると思うだけで、俺は嬉しくて仕方がない。ああ、もうノアレは年々可愛くなっているから、俺はノアレに会うと毎回ときめいてしまうのである。
それにしてもこれだけ可愛いとノアレは異性に恋心を抱かれてしまっているのではないか。そんなことを思って俺は心配になってしまう。
ノアレは今年八歳。
俺より一つ上の女の子のノアレは、もっと成長すれば美人さんになるだろうなと思う。
「ノアレ、久しぶり!!」
「ユーリ、久しぶり」
俺に向かってそう言ってくるノアレは、何だかこの前会った時とは少し様子が違う気がする。
どうしたのだろうか。
ノアレが悩んでいるなら俺はノアレの悩みがなくなるように、全力を尽くすのに。
そう思いながらノアレの手を掴む。急にノアレの手を掴んだからか、ノアレが驚いた顔をしている。
「なによ、急に」
「ノアレ、悩んだ顔してる。何か悩みあるなら、俺に言ってよ。解決できるのか分からないけれど、俺はノアレの悩みを解決したい!!」
俺がそう言えば、ノアレは何故だか呆れたような目をしている。だけれども面白そうに笑った。
「はは、本当にユーリは相変わらずね」
ノアレが笑ってくれたことが俺は嬉しくて、思わず俺も笑ってしまう。
「ノアレ、まず最初は遊ぼうよ」
「……まぁ、いいわ」
ノアレは俺に手を繋がられたままでもされるがままで、何だかノアレと仲良くなれた気がして嬉しい気持ちになった。
こうしてずっとノアレの手をずっと引いていられたらいいのに。
ノアレと一緒に居れて、ノアレと一緒に結婚出来たら、それだけで俺は幸せな気持ちになれるだろう。
いつかノアレと一緒にデートとか出来たらいいなぁ。ノアレとなら何処にだって行くのも楽しいだろう。
ノアレと一緒に水遊びをする。
ノアレは楽しそうに笑っている。
先ほどまで悩んでいた姿が嘘のように、ただ笑っている。その笑みを見ているだけで俺は嬉しい気持ちになった。
それにしても水も滴る良い女というか、水浴びでぬれたノアレを見るとドキリとしてしまう。というか、ノアレに会ってから俺はいつでもドキドキしている。
「ノアレ、俺、ノアレが笑ってくれて嬉しいよ。ノアレが笑っているのみると、俺、幸せな気持ちになって仕方ないんだ」
ノアレが笑っている。
それは一番、俺を幸せにしてくれるころなのだ。
他の誰でもなくて、ノアレがただ俺の目の前で笑っている。
それが嬉しいことだと改めて実感する。
ノアレはその言葉にそっぽを向く。少し照れているようだった。照れているノアレが可愛くて、俺はまた笑ってしまう。
「ユーリ、貴方、村の子供たちとそこまで遊んでないんですって?」
「んー、まぁ、丁度同年代があまりいなかったし、遊ぶときは遊ぶけど……俺もっと強くなりたいから」
「ふーん……」
ノアレはそう言いながら俺のことを見ていた。
俺は村の中でそれなりに浮いている。丁度同年代があまりいないからというのもあるだろうけど、それを抜きにしても、遊んだりはしていない気がする。少しずつ自分の修行の成果が分かるのが嬉しくて、耳の強化をしていくのが……俺にとっては楽しくて仕方がないのだ。
あと五感を一部塞いで行動する練習も、少しずつ様になってきて、なにyろいも俺はそれが楽しい。
「あ、でも最近、妹みたいな子は出来たよ。手紙が来る」
「……妹?」
「うん。街に行った時に知り合って、手紙でやり取りしてるんだ」
そう言ったら、ノアレにじっと見つめられる。何だか何か言いたそうな表情をしている。
「あ、でもノアレ、安心して。俺、お嫁さんにしたい相手がいるからってちゃんと言っているから!」
「小さい子に何を言ってるのよ!?」
「いや、だって幼いころの約束って大事なものじゃん。俺、ノアレ以外をお嫁さんにする気はないから、そういうのははっきり言わないと!!」
そう言い切れば、ノアレはやっぱり恥ずかしそうにそっぽを向いた。可愛い。
あまりにも可愛くて、俺はにこにこしてしまう。
「……ユーリ」
「なぁに?」
「あのね、あんた、さっき私に悩みがあるなら言ってって言ったでしょ。私、ユーリに話しがあるの」
急にこちらを向いたノアレはそんなことを言う。
「話?」
「うん。私、今度引っ越すことになったの」
「え」
「……だからその、定期的にこの村に来るのが難しくなるの」
――ノアレは言いにくそうに、そんなことを俺にいった。




