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うさ耳くんと、二度目の街 4

「お兄ちゃん、何処から来たの? 初めて見た!!」

 ジュリエルは好奇心旺盛な女の子のようで、さっきまで泣いていたのにすっかり泣き止んで、俺に向かって笑いかける。

 俺の耳と尻尾に興味津々のようだ。

「村からだよ。ジュリエルは街に住んでいるのか?」

「ううん。此処にはおばあちゃんの家があるの。だから時々だけ来るんだ」

 ジュリエルはこの街に祖父母が住んでいるらしく、それで此処にいるらしい。そういえば、俺祖父母の話、今世で聞いていないな。この世界、命が軽いからもうなくなっているのか、それとも遠い所に住んでいて俺が話を聞いたことがないだけなのか……。

 というか、俺強くなるために一人で黙々と行動する事が多くて、家族とゆっくり話すことはどちらかというと少ない。家族を大切にしていないわけではないけれど……ノアレの事が一番で、強くなりたいという気持ちの方が強いというべきなのだろうか。

 今度機会がある時に両親にそのあたりを聞いてみようと思った。

 ジュリエルと手を繋ぎながら歩く。俺の見た目が残念なことに可愛いと言える見た目だからか、俺は子供を引き連れていても、幸いなことに人さらいなどに間違われることはなかった。お店の店員さんに迷子の子供で、親を探していると言えば助けてもらえたし。こういう時、いかつい見た目とかだと警戒されるだろうしな。

 結局見た目が全てはないとはいえ、見た目って第一印象に大きな影響を与えるものだからな。

「ユーリ君、ジュリエルちゃんのお母さんを見つけたら報告するよ」

 俺がジュリエルの母親を探していることを言えば、結構な人がそういって協力してくれたのも俺の見た目の影響が強いだろう。

「ねーねー、お兄ちゃん、その耳と尻尾触りたい!!」

 ……しばらく手を繋いでジュリエルのお母さんを探していた。その間、ずーっと耳や尻尾に視線が向けられていたのだが、無視していた。だけど我慢が出来なくなったらしいジュリエルにそう言われてしまう。

「駄目だ」

「なんで? 触りたい!!」

「あのなぁ。お前がまだ子供だからそういうことを言うのは許されるが、獣人と話すときは気をつけろよ? 獣人にとって耳や尻尾というのは特別な人にしか触らせないものなんだよ」

「特別な人?」

 ジュリエルが不思議そうな顔をする。特別な人と言われても子供には分かりずらかったのかもしれない。

「ああ。特別な人だ。家族とか、番……俺にとってのお嫁さんとかにしか触らせないよ」

 番という言葉も分からないかもしれないと思って、お嫁さんと口にする。

 そう口にして思い浮かぶのはノアレのことだ。可愛いノアレ。俺の今世の初恋。ノアレがお嫁さんになってくれる未来を想像するだけでも俺はにやけてしまいそうになる。でも外だし、にやける顔を抑えたけれど。

 ノアレの事を考えていたらすぐにノアレに会いたくなってしまった。ノアレが俺のお嫁さんになってくれたら、俺はノアレと一緒にずっと一緒にいられるのにな。

「じゃあ、私がお兄ちゃんのお嫁さんになってあげる!」

「は?」

「そしたらその耳と尻尾も触っていいんでしょ。それに私、かわいいーってお母さんたちに沢山言われるんだよ。私をお嫁さんにする人は幸せだって!! だからお兄ちゃん私がお嫁さんになったら幸せになれるよ!!」

「いや、無理」

 なんだか無邪気に笑ってお嫁さんになってあげるなどと言われたが、普通に拒否しておいた。大人げないかもしれないが、こういう幼いころの約束って後を引くものだと思うし。俺はノアレ以外をお嫁さんにするつもりはないからこういう約束を口約束でもしたくないし。

「え」

「俺はな、ジュリエル。お嫁さんにしたいって決めてる子がいるんだ。その子以外をお嫁さんにする気は全くない。だからジュリエルをお嫁さんにすることはない」

 そう言ったらジュリエルが泣きそうな顔をしてちょっと罪悪感が芽生えたが、こういうのははっきり言った方がいいと思う。俺は泣き止ませるためにジュリエルの頭を撫でた。しばらく撫でたら泣きそうな顔が笑顔になった。

「お兄ちゃんは、私が嫌いで言っているんじゃないんだよね?」

「そうだな。嫌ってはない」

「でもお嫁さんにしてくれない……うん、じゃあ、私お兄ちゃんの妹になりたい!!」

「はい?」

「お嫁さんが駄目なら妹! 私、お兄ちゃん欲しかったんだ」

 どういう思考でそういう結論に至ったかは分からないが、この短時間でお嫁さんになるということは諦めたらしい。諦めてくれてよかったが、妹になりたいとはどういうことだろうか。

 でもまぁ、俺も妹ならば問題はないか。

「まぁ、妹ならいいけど。ジュリエルが勝手に俺を兄と慕う分には」

「じゃあ、私今日からお兄ちゃんの妹!!」

 にっこりと笑ってジュリエルは俺を見る。その後、何度も「お兄ちゃん、お兄ちゃん」とジュリエルは口にしていた。俺が妹ならいいといったのがよっぽど嬉しかったようだ。



 それからしばらくしてジュリエルのお母さんが見つかった。ジュリエルは「お兄ちゃんともっと一緒に居たい」と俺と離れるのを嫌がっていた。そんなジュリエルに俺の住んでる村のことを教えておいた。手紙をくれるなら返事ぐらいすると言えば、ジュリエルは大人しく母親と一緒に帰っていくのだった。





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― 新着の感想 ―
 いきなり義妹が(笑)
[良い点] キッパリ断るうさ耳くん 傷つけないようになあなあにすると双方に不誠実ですから子供相手でもちゃんと言えるのはかっこいいですね。漢らしさアップ! [気になる点] ジュリエルが今後どう話に関わっ…
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