うさ耳くんと、二度目の街 3
「わぁ!」
思わず魔法具のお店に入って、俺は子供みたいに声をあげてしまった。
だってそれだけ俺が驚くほどに沢山の種類が置いてあった。俺の住んでいる村は、いわゆる田舎と呼ばれる場所で、こんな大量の魔法具なんて見た事がなかった。
この前来た時は、魔法具のお店は見なかったからなぁ。でも流石に魔法具と呼ばれるだけ高いな。
でも高価な分、使い勝手がよさそうだよな。下手に安いものにすると、多分、すぐ壊れたりするのではないかと思う。村によく来る商人のガガゼさんもこういう高価なものこそ、偽物や不良品が多く出回っていると言っていたから。
羽ペンのような魔法具や、火を起こす魔法具、結界のようなものを張る魔法具――様々な魔法具の一つ一つが俺の心を興奮させる。やっぱりこういう魔法具を見ると、この世界がファンタジーの世界だと分かって俺は何だか嬉しい気持ちになる。
いや、もうそんなこと言っていたらそもそも俺の存在自体が、うさ耳と尻尾生えているしファンタジーなんだけどさ。
それにしても俺みたいな子供が魔法具を見ているのが珍しいのか、ギロリと睨まれている。店員からしてみれば、冷やかしにしか見えないのかもしれない。
確かに効能の良いものだと俺は買えないかもしれないけれど、そこまで高いものではなければ購入する事が出来る。ちょっと自分より背が高い相手に睨まれて怖いけれども、俺はどの魔法具を買うか悩んでいた。
どの魔法具でも俺の将来のためにはなるとは思う。学園に入った時に使えるものも沢山あるだろうし。でもどんなものにしようかなと悩んでしまう。
戦いに使えそうな物の方がいいかもしれないとは思うけれど――それにばかり頼ってしまったら俺は駄目になってしまうのではないかとそうも思う。やっぱり道具にだけ頼らないようにした方がいいだろう。自分の力で、未来を切り開けるようになった方がいいし。
そういうわけで俺は使い勝手がいいけれど、自分の気持ちが助長したりしないようなそういうものがあればいいんだけどな。
そんなことを思いながら見ていて、見つけたのは魔力を通して魔法陣を書いたりできるペンだ。
その後に色んな補充をしなければならないけれど、これを使って色んな事が出来る気がする。色んな可能性があるものだと思うので、これを買うことにした。それを持って、ニヤニヤしていたら店員さんに思いっきり睨まれていただけど――、多分俺が買わないと思っているのだろう。俺はそのまま会計した。俺が会計を済ませると、店員さんは驚いた顔をしていたけれど、俺が購入したら笑ってくれた。
流石に俺は万引きしたりとか、買わないで見て回るだけっていうひやかしはしないぞ!! それにしても持っているお金ほとんど使ってしまった。
ただこういう魔法の道具って何だか手に持っているだけでわくわくするものだよなぁ。
なんだろう、これから生きていく中で色んな魔法具が手に入ったらいいなぁ。それにしてもあれかなー、前世の小説とかでよく見たような《アイテムボックス》みたいなのもあったりするのかなー。そんなことを考えると俺はわくわくして、胸がときめいてくる。
いつかそういうものが手に入ったら嬉しいな。
さて、残りのお金で何を買おうかな。ちょっと小腹がすいてきたし、簡単なものでも買おうかな。
そう思って、簡単に食べられるパンを買って食べた。この世界のパン、前世よりもちょっと硬いものが多いんだよな。ただ俺もうさぎの獣人とはいえ、獣人だから歯の力も人間よりは強いしな。
パンを食べた後は、村の人たちと合流するために歩いていた。
そしたら子供の泣き声が聞こえてきた。
どこから聞こえてくるのだろうかときょろきょろとあたりを見渡せば、小さな女の子が泣いていた。
人間の女の子である。俺よりもちょっと年下ぐらいの女の子。
「どうしたんだ?」
「……うさぎ、さん?」
俺の顔を見て、泣いていた女の子は不思議そうな顔を浮かべていた。うさぎの獣人を見かけたことがなかったのかもしれない。
俺の耳と尻尾を触りたそうにしていたけれど、それは拒否しておいた。いや、だって幾ら小さな女の子だろうとも、こういうの触っていいのは家族や番だけだって言われてるしさ。
俺はノアレ以外の女の子には触られたくないなっていうのが正直な感想だから。また女の子が泣きそうになっていたけれど、「それでなんで泣いてるんだ?」と問いかける。
「……お母さんと、はぐれた」
「そうか……。じゃあ、お兄ちゃんと一緒に探すか?」
「お兄ちゃん……? お姉ちゃんじゃないの?」
「俺は男だ!!」
初対面の女の子に女だと間違われて、慌ててそう言い放つ。
俺は男なのに……いつかもっと男らしい存在になりたいのに。とりあえず男だということを納得してもらって、女の子のお母さんを探すことにした。女の子の名前は、ジェリエルというらしい。




