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うさ耳くん、世界を知っていく ①

 一歳を過ぎて、家の外に出させてもらえるようになってくるとこの世界について少しずつ理解が深まってくるようになる。

 周りの会話から、この世界に人間という種族もきちんといることが把握出来た。というか、俺の所属しているこの村も、王様は人間みたいだった。ファンタジー小説とかで時々あるように、人間は人間の国、獣人は獣人の国というように分かれているわけではないらしい。人間の国の中で獣人たちが住んでいる地方みたいなのがあって、そこに俺たちは住んでいるらしい。

 でもとりあえず、獣人が迫害されているとかそういう世界ではなくてよかったと思う。もしかしたら昔はそうだったとかいう過去があるかもしれないが、少なくとも現状は人間の商人がこの村に荷物を売りにくるぐらいには信頼関係はあるみたいで本当によかったと思う。元人間として、今は獣人であっても人間と好んで敵対しようとは正直考えていなかったから。

 転生ものの小説とかだと時々ハードモードな時もあるから、正直はらはらしていたけれど本当によかったと思った。

 しかし、油断してられないな。これからもハードモードになる可能性も十分ある。俺はハードモードの人生よりもイージーモードの人生を歩みたいけれども、難しいかな。出来るだけイージーモードになるように、俺自身頑張っていこう。前世よりも頑張って、楽しい人生にしたいからな。

「ユーリ、ユーリ」

 兄さんは凄く俺のことを可愛がってくれている。兄さん俺のこと抱っこしたいみたいだけど、兄さんも子供だし無理だってことで落ち込んでた。母さんが「もっと大きかったからね」といっていたけれど、兄さんが大きくなる頃には俺も結構大きくなってるだろうし、流石に抱きかかえられたくない。

 でもあれかな、父さん背が高くて、母さんは背が低いから俺もやっぱ背が低くなるのか? となると背が高くて力持ちそうな兄さんに抱きかかえられることもできそう。いや、でも俺背の高さは高くなりたいからあきらめないぞ。いっぱい牛乳とか背が伸びそうなもの呑むんだ。

「にぃに」

 兄さん、と呼ぶにはまだ口が回らないからにぃに、にぃにと俺は呼ぶ。兄さんは嬉しそうに笑っている。何時頃から兄さんと呼ぶべきなのだろうか。出来たら呼べるようになったらすぐ兄さんに移行したいのだけど、いきなり兄さんだと変な気がする。

 そんなわけでしばらくはにぃに呼びである。というか、兄さん、子供だけどかっこいいんだよな。狼の耳と尻尾、凄い憧れる。そして自分のうさ耳と尻尾見ると何とも言えない気持ちになっている。しかし兄さんの耳と尻尾、凄いふかふか。もふもふ度がやばい。俺、前世から犬とか好きだったんだよな。もふもふしたものって癒されるし。まさか自分がもふもふになるとは思わなかったけど。

「ユーリは本当に耳とか触るの好きだなぁ」

「うん」

「でも家族とか以外のは触っちゃ駄目だからなー?」

「うー?」

 どういうことなのだろうと、兄さんを見ながら思う。

 父さんとか母さんの耳とか尻尾めっちゃ触ってし、母さんや兄さんも俺の耳とか尻尾も触ってるし、でも家族ではなきゃ駄目? 俺は折角獣人の村にいるんだから様々なもふもふを触りたいと思っていたのだけど、その野望は駄目なのだろうか……。

 そう思いながら兄さんを見る。

「ユーリにはまだ難しいかもしれないけどなー、耳とか尻尾っていうのは大事な人にしか触らせてはいけないとかなんだぞー?」

「う?」

 俺が一心に触っている兄さんのもふもふも家族じゃなければ触れないのか!? 聞いていてびっくりした。でも俺まだ一歳だし、兄さんの言っていることとか理解していたら明らかにおかしな赤ちゃんだから分からないみたいな態度したけどさ。

 兄さんの凄くふわふわな毛並本来なら触れないのか。家族じゃなければ触れないっていうのならば俺、父さんと母さんと兄さんの耳と尻尾触りまくろう。変なこと言っている気がするけど、毛並触るの楽しいんだよ!

 また兄さんの尻尾に手を伸ばす俺に、兄さんは「ユーリわかってないだろ?」と困った顔をしていた。大丈夫、俺ちゃんとわかってる。

 兄さんにも俺の耳とか尻尾触られた。なんかこそばゆい気持ちになった。あと気持ち良い感覚とかになる。はっ、だから家族以外駄目とかなのか? 元々前世で人間だったっていう前提の考えがあるからちょっと色々獣人の常識、生まれて一年でも全然わかんないんだよなぁ。もっと家族と接していきながらも獣人という種族がどういう存在なのか知っていかないと。俺は人間として生きてきた記憶があるけれども、今は獣人なのだから獣人として生きていかなきゃなんだから。

 俺は兄さんの尻尾を相変わらず触りながら、そんなことを思うのだった。




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