うさ耳くんと、戦闘後の会話
「ユーリ、さっきのは何?」
「……秘密!! ただ一言いうなら俺はノアレに勝つために色んな事を思考錯誤しているんだよ。その一つだよ!! 俺がノアレに勝てたら俺がどうしようとしているか教えるよ」
俺はノアレに嘘はつきたくなかったけれど、それでもノアレに勝つためにもノアレに対して自分の手の内を教えるべきではないと思った。
だからこそそう言い放った。
ノアレは、少しだけ不服そうな表情をした。その表情を見て、ノアレに嫌われてしまうのではないかとドキドキしてしまう。俺はノアレに嫌われてしまったら生きていけない。
今からでも自分の手の内をさらすべきだろうか……。そんなことを考えているとゲルトルートさんが口を開く。
「ノアレちゃんはユーリの事が本当に気になっているのね」
「なっ……わ、私はユーリのことなんか気になってないわ!!」
「またまたそんなことを言って……ノアレちゃんはユーリの事が気になるからこそ、ユーリに秘密にされて嫌なんでしょう?」
「そ、そんなことないわよ!!」
ノアレが、俺のことを気にしてくれている。
――その事実を実感して俺は嬉しくて仕方がなくなった。
「ノアレ、秘密にしてごめんね! ノアレに俺が勝てたらちゃんとノアレに話すから」
「……ユーリは私に勝つ気でいるのね」
「そりゃそうだよ。ノアレに勝って、俺はノアレをお嫁さんにしたいんだもん!!」
「……っ」
俺の言葉にノアレは耳をぴくぴくとさせてそっぽを向いた。
可愛い。とてつもなく可愛い。ノアレはどうしてこんなにも可愛いのだろうか。俺が前世も含めて見てきたどんな女の子よりも可愛く見えるのは……惚れた弱みだろうか。
やっぱりこれだけ可愛いノアレの事を俺はお嫁さんにしたい。俺以外の男がノアレと仲よくしているのは嫌だし、そのためにもノアレに勝たないといけない。
「ノアレ、俺ね、ウサギの獣人だから戦闘には向いていなかったとしてもノアレより強くなりたいんだ。俺はノアレのことが大好きだからノアレの事を守れるようになりたいんだ」
「……も、もう、恥ずかしいことを言わないの!!」
ノアレは俺の言葉に顔を真っ赤にしている。なんだろう、好きな子の顔を真っ赤にした姿を見ると何だか高揚した気持ちになる。
俺ってちょっとSっ気あるのかもしれない……。もちろん、相手がノアレだからなんだれど。ノアレがこれだけ顔を真っ赤にしているのを見ると可愛いなとあるし、もっと見たくなってしまう。
「ノアレ、俺はノアレより絶対に強くなるから。そしたらさっきのことをちゃんと話すよ」
「……分かったわ」
「じゃあ、ノアレ、他のことも話そうよ。俺はノアレと沢山は話したいんだ」
強くなることも大事だけど、俺はノアレと沢山、色んな会話をしたい。ノアレとは何時も会えるわけじゃないから、だからこそもっとノアレのことを知りたいなとそればかり考えているのだ。
ノアレは俺の言葉を聞いて笑って頷いてくれた。
やっぱりノアレは可愛い。あまりにも可愛くて、俺は嬉しくなった。ノアレが傍に居てくれるだけで俺にとっては幸せだとそんな風に実感をした。
「ノアレは、この木の実すきなの? 俺も好き!!」
「そう……。そういえば、この木の実を使った料理、私習ってるの」
「そうなんだ。ノアレの料理食べてみたいな」
「……明日作ってあげる」
「本当!? わーい。ノアレの料理、食べれるって思うと俺、凄い嬉しいよ。ありがとう!!」
「……美味しいかは断言出来ないからね」
「いいんだよ。美味しくなくても好きな子の料理っていうのが重要なんだもん」
俺がそう言えばノアレはやっぱり恥ずかしそうに無言になるのだった。
それからノアレが俺の家でその料理を作ってくれた。兄さんや母さんはちょっと何とも言えない表情をしていたけれど、何だかんだノアレが家で料理をするのを許してくれた。母さん達からしてみれば、俺が無茶をしている原因がノアレだから少し思う所はあるのだろう。
でもまぁ、俺はノアレに会わなかったとしても前世の記憶がある限り、強くなろうとはしたと思う。一番の理由はノアレに追いつく事だけれども、それ抜きにしても俺はかっこよく、強くなりたいって思っているから。
ノアレの作った料理はちょっと焦げていたけれど、それでも好きな子が作ってくれたものだと特別な味がした。
「……焦げちゃったから無理して食べなくていいわよ。……い、いつもはこんなに焦がさないのよ!! 人に作ることなんてなかったから……」
「焦げていても食べるよ。だってノアレが俺のために作ってくれたものだもん」
「何をにこにこ笑っているのよ」
「だってノアレが可愛いし、幸せなんだもん」
そう言って笑えば、またノアレはそっぽを向いた。照れてるんだな、可愛いなーと俺は嬉しくて仕方がなかった。




