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うさ耳くんと、初恋の女の子と三回目の戦い

 俺も晴れて六歳になった。

 魔法を使えるようになって一年だ。この一年で、ゲルトルートさんに習ったり、冒険者たちに習ったり――魔法の使い方は少しずつ得意になってきたと思う。

 とはいえ、やっぱり俺はうさぎの獣人だからこそ、もっと攻撃的な魔法が得意な人たちよりは全然魔法が下手である。

 大体光の魔法は基本的に治癒系だからな。俺が使える攻撃に有用な魔法はほぼ無属性魔法である。

 というわけで、色々難しいんだよね。

 とりあえず耳の強化に関しては少しずつは進んでいるけれどもまだ実用的であるかどうかでいえば、実用的ではないとしか言いようがないし。

 そんなわけで俺がノアレと戦う時に使えるのは、身体強化が主である。あ、でも攻撃を食らった分、自分で回復するってのもありだよね!! やっぱり魔法が使えるか使えないかで色んな夢が広がっていくと思う。

「ユーリ、少し背が高くなった。まだ、私よりは小さいけど」

「うん、俺も大きくなったんだよ!!」

 俺の目の前にはノアレが居る。

 俺が恋して、追いつきたいと願ってやまない初恋の女の子。

 ――少しずつ大きくなっていくノアレは徐々に、少女から、女の子らしくなってきていると思う。これからもっとノアレが素敵な女の子になっていったらきっとノアレはもてるだろう。やっぱりノアレに好きになってもらいたいなと思う。

 黒みがかった灰色の髪に、黄色の瞳。それに黒い耳に尻尾。全部可愛いと思う。少しだけ目は吊り上がっているから、将来的に可愛いというより美人さんになるのかもしれない。

「ノアレは可愛い! 大好き!!」

「……何を言っているのよ」

 ノアレは俺の言葉にそっぽを向く。ああ、可愛い。俺が素直に言った方がなんかノアレは可愛いと思う。可愛い反応をしてくれるのがうれしくてにこにこしてしまう。

 そして恒例のノアレとの戦いが幕を開ける。

 何だかノアレは去年よりも隙がない。俺が鍛錬を続けてきたからこそ余計にわかると言えるべきだろうか。やっぱりノアレって戦う才能があるのだと思う。延滞的な身のこなしが何ていうか、身軽というか……俺はいつになったらそんなノアレに追いつけるのだろうかという不安も多い。

 でも諦めたら終わりだって俺の前世で好きだったマンガでも言ってたし、俺は諦めない。






「赤色の魔力よ。我が命に従え。赤き赤き魔力が集い、それは敵を焼き付く弾丸となる。その姿を現せ。

《赤き弾丸ファイヤーブレッド》」




 それは去年使っていたのと同じ魔法だった。だけどその練度が違う。数も違う。前は二つだったのに今はもっと多い。

 ああ、ノアレは俺が必死になって修行している時もずっと修行を続けていたんだなと思う。俺はそういう強さに対してストイックなところもノアレは素敵な女の子だとほれぼれする。

 って、ノアレに見惚れるよりもこの魔法に対応しないと。俺は身体強化の魔法を使って、その俺に迫りくる魔法と、向かってくるノアレを対処することを考える。

 ちなみに視力も魔力次第ではもっと強化出来るんだよね。上手くやらないと目が見えなくなるからゲルトルートさんに教わりながらやっているけど。

 うさぎの獣人のよさってその素早さだ。俺はその素早さを使って、それらをよけていく。ちょっと危ない所もあった。かすれた時はひやりとしたけれども、俺はなんとかよけられた。今まで俺がやってきたことが無駄ではなかったのだと分かって、嬉しい。

 ああ、嬉しくて嬉しくてニヤリと笑ってしまう。

 視界に映るノアレも口元が歪んでいる。ノアレはこうして俺が強くなっていることが嬉しいと思ってくれているのだろうか。俺はそれが嬉しい。

 俺のやってきたことが、ちゃんとノアレに響いている。それが分かれば嬉しい。いや、もちろん勝ちたいんだけど。

 ノアレの攻撃を俺は避けるばかりだ。たまに俺から木剣で襲い掛かっても……、ノアレは簡単によける。下手にノアレに余裕を見せさせると魔法をまた使われてしまう。それが分かるからこそ、俺はノアレに余裕を与えないように動いている。

 ――でもこのままでは、俺は押し負ける。

 ノアレは俺より年上で、俺より体力もあり、俺よりも攻撃魔法が使える。

 そんなノアレに勝つために俺はどうしたらいいか。

 そう考えた時、俺はやはりノアレが予想のつかない動きをするべきだろうと思った。——そこで一つの賭けをすることにした。

 まだ完成しているわけではないけれども、それでもやるしかないと耳に魔力を込める。

 そしてその耳をノアレの方へと向ける。ノアレは驚いた顔をして、一瞬木剣を怯める。だけどー―次の瞬間には、木剣を足に振るわれて、俺は倒れこんでしまった。

 耳へ魔力を込めることで、ノアレを怯ませることはできたが、そちらに集中しすぎてしまったようだ。それで足元がおろそかになった。

「また、負けた!!」

 悔しくて俺はそう口にする。

 座り込む俺を見て、ノアレは驚いた表情のままだ。一応驚かせることは出来たが、まだまだだ。もっと使い勝手が良いようにしないと。




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