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うさ耳くんと、冒険者 3

 今日はザッドクさんたちの依頼についていかせてもらっている。父さんもザッドクさんと一緒ならと許可を出してくれた。母さんは心配そうな顔をしていたけれど、俺の本気が分かっているからかそれ以上何も言わなかった。兄さんも既に俺がそうやって突き進むのも諦めているらしい。

 あれだな、俺は転生者だから精神年齢も高いし、暴走することはしないけどさ、この年代だとやりたいことを抑圧されると一人で飛び出したりしてしまうかもしれないからな。

「ユーリは、まだ子供なのに新人冒険者よりも聞き訳が良いわよね」

 そんなことを言われてしまう。

 将来的に色んな所を見てみたいと思っているし、折角の機会だから沢山の事を集中したい。でも考えてみれば当たり前かもしれない。俺は二週目だからこんな風に冷静に過ごせているけれど……、そうじゃなかったらこうもいかないだろう。

 今日は村の周りの魔物退治を村長から頼まれたということで、ザッドクさんたちは魔物退治に向かっている。

 どの魔物を倒すかという指定はない。ただ危険な魔物がいれば退治するようにということなのである。

「ユーリ、この魔物はな……」

「こっちはね」

 そんな風に見かけた魔物についての情報を教えてくれる。ただ俺の記憶力がそこまでよくないから全部覚えきれなかったのか残念である。なんだろう、一度聞いたことを忘れることがないなどというそういうユニークスキルか何かでもあったら楽だったのに。そんな風にも思う。けど、まぁ、楽して強くなれることなんてない。

 魔物についての情報ももっと集められたらいいな。俺は圧倒的な強さもないし、色んな情報を持っていないと何事にも対応することが出来ないのだから。

 冒険者の人たちに沢山の事を教わる。その経験は俺にとってかけがえのないものになったと言えるだろう。なんせ、俺たちの住んでいる村は閉鎖的な場所で滅多に外から人が来ないから。だからこそ、こういう機会があったらこれからも逃さないようにしなければならない。そんな風に改めて自覚する。

 チャンスというのはつかみ取らなければ手に入るものではない。

 ――俺はノアレの事が好きで、ノアレと一緒に居たい。その目標を叶えるために、妥協なんてしていられない。うさぎの獣人はただでさえ、戦闘に向いていないというのがあるのだからそういうのはちゃんとしなければならない。

 冒険者たちと此処で縁を結べたということは本当に俺にとっての財産だった。現地で冒険者として働いている存在だからこそ、分かることというのが沢山あるのだ。俺はザッドクさんたちに懐いたし、ザッドクさんたちも俺のことを可愛がってくれた。

「……じゃあね、ユーリ。またね。今度は同じ冒険者として是非会いましょう」

「ユーリ、無理をするんじゃないぞ。そして少しずつ強くなっていくんだぞ」

 そしてお別れの日はあっと言う間にやってくる。

 もっと沢山学びたいこともあるし、もっとずっと一緒に居てくれたら嬉しいなと思っている。それでもそんなことを口にして、ザッドクさんたちを困らせたくなんてないから。

 それにしても誰かが去っていくのは、何だか悲しい気持ちと寂しさがわく。だけど、俺はまだ子供で、俺の人生はまだまだ続くのだから、いつかザッドクさんたちに出会えるようにもっと強くなっていきたい。

「ユーリ、大丈夫か?」

「大丈夫だよ、兄さん。ありがとう」

 兄さんは俺が冒険者たちが居なくなったことに落ち込んでいるのを察して、心配そうに声をかけてきた。

 こういう気遣いが出来るから兄さんはモテるのかもしれないなと感じる。俺はどっちかっていうと自分のことで精一杯だからな。ノアレと出会ってからは特に強くなることばかり考えて、そこまで周りと交流を深めているわけでもないし。

 いや、もちろん、家族や村人たちとの交流は続けているけどさ。丁度、俺と同年代が居ないからというのもあるかもしれないけれど、客観的に見て見ると俺は変な子供でしかないよな。

 

 


 冒険者であるザッドクさんたちが居なくなってから、俺はゲルトルートさんに魔法を教わりながら、相変わらずの生活を送っている。

 耐性をつけるための訓練も続けていて、前よりも耐性がついてきたことも分かった。幻覚の耐性をつける時に失敗して、変な幻覚を見たりもしちゃったけれど、上手く行ったから結果オーライだと言えるだろう。

 ――いつも通りの日々を過ごしていく中で、時は過ぎて行った。

 またノアレがやってくる日がやってくる。




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