うさ耳くんと、ゴブリン 3
「それでね、兄さん」
「冒険者ってね」
俺は冒険者から話を聞けたことが嬉しくて、兄さんに沢山冒険者から聞いた話の事を語った。
兄さんは冒険者に俺のように興味を抱いていないはずだが、黙って話を聞いてくれた。最後に「ユーリはやっぱり可愛いなぁ」と言われたのは解せぬって思ったけどな!!
でもいいんだ。今の俺は冒険者と沢山会話を出来た、冒険者と仲良くなれたという思いでいっぱいだから!!
ちなみに興奮して仕方がなかった俺は、飛び跳ねて頭をぶつけてしまって、母さんたちに「もっと落ち着きなさいね」と言われてしまったけどな。
でもそんな風に言われても俺の興奮はとどまらなかったけど。最終的にゲルトルートさんに「もっと落ち着かないとノアレちゃんに嫌われるわよ」と言われて俺も落ち着くことになった。
だってノアレに嫌われたら俺は生きてなんていられない。大げさだって言われるかもしれないけれど、ノアレへの恋心は俺にとって大事で、ノアレの事が一番大事だと思えるぐらい俺はノアレに恋しているから。
そういえばその後、ザッドグさんたちの所へ向かったらノアレのことを誰かが言ったらしくほほえましい目で見られてしまった。俺は、一応精神年齢は大人なんだけどなーと複雑な気持ちである。
あと俺が相変わらず五感を覆って訓練とかしていたらザッドグさん達には何をしているんだとか目を剥かれたりしたけどな。俺は自分が強くなるために一生懸命なだけなのに、そういう目で見られるとなんというか、少し何とも言えない気持ちになった。
ゴブリン退治をどのように行うかという作戦会議は大人たちと冒険者たちで行われている。俺も参加したかったけれど、子供だからって駄目だって言われた。
話し合った内容については、俺もゴブリン退治に参加するから教えてはくれるらしいけど、どうせなら作戦会議から参加したかったなーってなる。でも俺がまだ子供な事は確かだし、焦っていても仕方がないということは十分理解している。
一歩ずつ、一歩ずつでいいから、強くなって俺がやりたい未来がつかみ取れるようになれればそれでいいのだ。
そして出来ればノアレと幸せな家庭を築ける事が出来れば! と俺はそればかり考えているのであった。
冒険者たちから話を聞いたり、訓練をしながら過ごす日々――そんな中でゴブリン退治の日がやってきた。
俺は父さんの傍を離れないことを再度、父さんに言われた。俺が離れて勝手に飛び出すとでも思っているのだろうか? 流石に、俺はそこまで子供じゃないぞ。
そう思うものの、まぁ、俺もこの世界に転生して好き勝手している自覚はあるので、父さんにしてみれば俺は目が離せない息子なのだろう。
初めての人型の魔物を退治する……なんだか心臓がバクバクしてくる。俺に出来るだろうかという不安も大きい。初めてやることっていうのはどうしてこうも緊張してしまうものなのだろうか。もっとさらっとなんでもこなせる系のイケメンに俺はなりたかった!!
そんな願望が湧くものの、俺が俺であることはかわらない。俺はそこまで自信満々にはなれないし、俺は何でもすぐにこなせるだけの才能があるわけではない。チート主人公にはなりえないのだから、少しずつでも強くなって、ノアレに振り向いてもらわないと。
「父さん、俺頑張る!!」
「ああ。頑張るのは構わないが、無理だけはしないでくれよ。ゴブリンはユーリみたいな可愛い子は率先して攫いそうだからな」
「怖い事言わないで!!」
「本当のことだ。攫われてしまったら大変なことになるから、本当に気を付けるんだぞ」
「うん!」
父さんに恐ろしいことを言われて俺は震えた。俺はまだ子供だが見た目が良いのでゴブリンが率先して攫おうとする可能性があるらしい。俺の初体験はノアレにささげたいので、油断して攫われないようにしようと思う。
俺は子供で、体重も軽いからゴブリンたちでもさらえそうだし。
ゴブリン退治に向かう間、村を守る要員として兄さんは村に残っている。相変わらず女の子に囲まれていて、うわーってなった。兄さんは「ゲルトルートさん!!」って滅茶苦茶ゲルトルートさんに話しかけていたけど。女の子達はゲルトルートさん睨んでいたしね。なんて恐ろしい女のギスギス……。やっぱり俺ノアレだけでいいなーって思った。
ゴブリンの巣へと一歩一歩向かっていく。
そうしていれば、「ギャギャッ」という不気味な声が聞こえてきた。これがゴブリンたちの声らしい。今から俺達は不気味な声をあげるゴブリンたちを討伐する。
緊張したように剣を握ってしまえば、
「ユーリ、落ち着け」
と父さんに頭を撫でられた。
俺を優しい目で見ている父さんを見て、なんとか気分を落ち着かせることが出来た。
よし、ゴブリンを退治する!! そしてノアレにかっこいいっていってもらうんだ。そんな思いで、俺は村人たちと冒険者たちと一緒にゴブリン退治に躍り出た。




