うさ耳くんと、兄の初恋の行方 2
兄さんがゲルトルートさんに告白をする。
そのことを俺は応援することにしていたのだが、兄さんにとっての告白の障害は兄さんに惚れている女の子たちである。彼女たちは兄さんに恋するあまりに、兄さんの周りにいつもいる。それでいてゲルトルートさんに兄さんが好意を抱いていることを直感で分かっているのか、邪魔しているのが見られる。
兄さんはちょっと乙女チックなところがあるというか……、告白はちゃんと二人きりでやりたいといったのがあるみたいだから。というかルリィ姉ちゃんたちは俺よりも兄さんのことをよく見ていて、兄さんのことを知っているから、兄さんがそれだけちゃんと他の人がいない所で告白をしたいという気持ちを分かってるんだろうなと思う。
俺としては兄さんが満足が行く結果になってくれたらいいなと思うのだけれども、ルリィ姉ちゃんたちからしてみればずっと好きだった兄さんが大人の女性に恋して余裕がなくなっているのかもしれない。
好きな相手の幸せを祈るっていうのは綺麗な恋の形だと思うけど、俺もノアレが好きな相手が出来た時に素直に応援出来るかと言えば無理なので、ルリィ姉ちゃんたちも本当に兄さんを好きなのだなと思うだけである。
ああ、でも俺はルリィ姉ちゃんたちよりも兄さんのことを応援したい。兄さんは男のことを可愛いっていう。それは勘弁してほしいし、過保護すぎるのは嫌だけど――それでも転生者で変わった俺のことを可愛がってくれる大事な兄なのだ。ルリィ姉ちゃんたちには悪いけど、兄さんが告白しやすいように暗躍をしよう。
恋のキューピッドになれるかどうかは分からないけど、恋の手助けするのも楽しそうだし。まぁ、もちろん、楽しそうって気持ちよりも兄さんに上手く行ってほしいという気持ちの方が大きいけど。
そんなわけで俺はルリィ姉ちゃんたち含む女の子たちをどうにか兄さんから目を離させることにした。
「ルリィ姉ちゃん、兄さんが――」
「兄さんが――」
ははは、ちなみに考えつかなかったため大体兄さんから引き離すための理由付けは兄さんにまつわることである。というか、兄さんに惚れている女の子たちって兄さん第一過ぎて他のことでは気を引けないし。
「ってわけで、兄さん頑張って!!」
俺が頑張って兄さんの周りの女の子たちをどうにかして、兄さんにそう言えば兄さんは戸惑っていた。うん、兄さんは鈍感属性を持っているから女の子達が自分に恋をしていることも考えてなさそうだしなぁ。兄さんは周りの子たちが邪魔をしているなんて考えてもいなかったみたいだし。
とりあえず兄さんの背中を押して、ゲルトルートさんを呼び出した俺。めっちゃ恋のキューピッドとして頑張った気がする。あー、疲れた。あとからルリィ姉ちゃんたちにどやされるかもしれないけど、俺良い仕事したと思う。
あ、ちなみに告白シーンを覗き見とか野暮なことはしないよ!!気になりはするけれども、そんなことして邪魔するわけにもいかないし。というか、俺も告白シーン覗き見られるのは嫌だし。俺に関しては人前でもノアレに好き好き言っちゃってるけど。
それにしても兄さんも男気あるよな。ちゃんと年の差があっても告白するんだから。俺は兄さんの恋がどうなるのだろうかと自分のことのようにドキドキしてしまう。
そうしていれば、告白が終わったのか兄さんがやってきた。
その表情は、どちらとも取れないような表情だ。なんだろう、振られたにしては落ち込んで泣いているわけでもなく、告白が成功したと晴れ晴れとしたわけでもない。どちらとも取れなくて、俺はどうだったのだろうかとドキドキする。
「に、兄さん、どうだったの?」
「……んー、と。振られたと言えば振られたんだけど、ただ――」
兄さんは真っ直ぐに俺の方を見て、告げる。
「……大人になっても、まだその好意が続いたのならばまたおいでって言われたんだ」
「おー、それはちょっと希望持てるね!」
確かに今の年齢じゃ、ゲルトルートさんからしてみれば子供でしかないだろうから。でも子供の淡い初恋だからと簡単にあしらうこともせずに、ちゃんと告白に答えたところが凄いなぁ。かっこいい女性だなと思った。
「兄さんは、どうするの?」
「うーん、俺はゲルトルートさんのことは好きだけど、これが大人になるまでずっと続いていくものなのかが自分で分からない」
「うんうん。そりゃそうだよね」
それはそうだろう。恋愛感情なんてどうなっていくか分からないものだから。
俺のノアレを好きだって気持ちはずっと続くと自分で思っているけれど、本当にずっと続いていくかって分からないことだから。
「でも――もしずっとこの気持ちが俺の中にずっと残り続けるのなら、大きくなった時にゲルトルートさんに会いに行ける俺でありたい」
「うん」
「……もちろん、ゲルトルートさんが村に居る間にもっとかっこいい所を見せたいけど」
「じゃあ、俺もそれ手伝う!!」
俺がそう言えば、兄さんは笑って頷くのだった。
兄さんの告白は、完全に成功したわけではないけれどまだその恋が終わったわけではない。
その恋がどうなるのかは分からないけれど、俺は弟として兄さんの幸せを応援していこうと思った。




