うさ耳くんと、商人 2
「こんにちは」
「ああ、こんにちは。今日はユーリ君も一緒なんだね」
父さんが挨拶をすると、商人のガガゼさんは俺を見て笑みを浮かべた。
ガガゼさんは狐の獣人の男性の商人さんで、この辺境の村にいつも物資を運んでくれている。たまに村に訪れるガガゼさんは、色んな場所に行って商売をしているような人だという。近隣の獣人の村の出身らしくて、こうして村まで来てくれるらしい。
「ああ。ユーリは魔力があったんだ。だから大きくなったら魔法学園に入学する。この村だけなら硬貨は使わないから問題はにないが、魔法学園ではそうもいかないだろう?」
「ああ。なるほど。良かったですね。ユーリ君。あれだけノアレちゃんに置いて行かれたくないと言っていたもんね」
「うん。良かった!」
……やっぱり俺、精神年齢も体に引っ張られている気がする。まぁ、俺まだ子供だからこれで問題ないし、良いのだ。もっと大きくなったら大人の男性らしく、ピシッとかっこよくなるのだ。そして、ノアレにかっこいいって言ってもらえる大人になるのだ。
そのための第一歩がお金について学ぶことだ。
「じゃあそうだね。ユーリ君、この石、どちらが高価だと思う?」
わざわざ商品を手に取って、ガガゼさんは俺に教えて呉れようとしていた。商売に来ているのにいいのだろうかと、周りの村人たちを見る。彼らは揃いも揃って「いいぞ、時間もあるし」「どうぞどうぞ」「ユーリ頑張れ」と気にしてない様子だった。
まぁ、小さな村だし、ある程度もうやり取りは終わっているのかもしれない。周りの言葉に甘えることにした。
「んー。こっち?」
差し出された石。正直どういう効果があるのかもさっぱり分からないし、俺からしてみればどっちも同じにしか見えない。手のひらに乗る小さなサイズで、黒色と白色の石。なんとなくで選んだ。でもこういうのも分かるようになったら、ノアレへのプレゼントにも出来たりするのだろうか。
「残念。こっちの黒い方が価値があるよ。これはねーー」
そう言ってガガゼさんはその石の説明をしてくれる。うーん、何が違うの一見すると分からないけど、白い方より、黒い方の方が倍近く高いらしい。俺がそういう値段とか知らなかったら、安いものを高く買ってしまったりするんだよなぁ……。
「じゃあこっちのアクセサリーは?」
「おー、キラキラ!!」
次に見せられたのは、ピンク色の宝石のついたキラキラしたペンダントである。見るからに高そうだ。こんなプレゼントノアレにあげれたら喜んでくれるだろうか。ノアレにいつかプレゼント出来るように稼ぎたいなぁ。
「えっと、金貨20枚ぐらい? とか?」
20枚なら日本で言う20万円である。もっとするかもしれないけど、あてずっぽうでそう言った。
そしたらガガゼさんも父さんも笑う。
「ああ、ユーリ、これは見た目ほど高価なものではないぞ。採掘量も沢山あるし、これだけの大きさで金貨2枚ぐらいだぞ」
「え、そうなの?」
おおう、こんなにキラキラしているのにそんなに高くないのか。いや、普通に考えたら高いんだろうけど、見た目ほどこんなに安いとは思わなかった。
こういうピンクの宝石、ノアレに似合いそうだなって思うけど、女の子って高いものの方が嬉しいんだろうか? ぶっちゃけ、前世でも女の子と付き合ったことなかったからなぁ……、そういうの分からないんだよな。
でもノアレが俺のことを好きになってくれたら、俺があげたものどんなものでも喜んでくれたりするだろうか。
なんか、俺、ノアレのことばかり考えている気がする。でもプレゼントっていいな。ガガゼさんに相談してからノアレへのプレゼント手に入れられるように頑張ろうかな。
「じゃあ、次は――、例えばユーリはこれを銀貨1枚って言われたら買うか?」
「ええっと、うん。買う」
「残念。これは半銀貨の価値しかない」
おおう、俺は倍の額で買っちゃう所なのか。難しい。
なんというか、全然俺は分かってないなと実感する。もっと色々上手くできればいいのだが……でもまだ学びだしたばかりだからいいだろう。そのうち、ちゃんと物の価値が分かるようになりたい。ノアレにもっとかっこいい部分を見せられるようにいつかなりたい。
「うー、全然分からなかった」
「仕方ないだろう。ユーリ、これから学んでいけばいいさ」
「そうだよ、ユーリ君。まだユーリ君は子供だからね。もっと色んなことを学んでいけば、ちゃんと適正価格で手に入れられるようになるよ」
俺が落ち込むと父さんとガガゼさんはそう言って慰めてくれる。
というか、特に俺も舐められやすいだろうからぼったくりとかあうかもしれないって言われた。……うん、俺はどっちかっていうとかっこいいっていうより、女の子に間違われるぐらいだ。がっかりするけど、それは事実。そういう見た目だとなめられて、ぼったくられたりとかしやすいらしい。いかつい見た目だとそうでもないんだとか。
あー……ということは俺はもっと気を付けていくようにならなきゃならにんだなと思った。大変だろうけど、頑張る!!
それから来てくれた時に毎回、ガガゼさんがもっと色々教えてくれることになった。




