うさ耳くんと、商人 1
身体強化の魔法を続けているが、まだ耳の強化にまでは辿り着いていない。
耳って人の急所だったりするし、中々そこまで出来ないのだ。俺はもっと強くなりたいと思うが、下手に行動して失敗してしまうと困るからちゃんとゲルトルートさんの話を聞いている。
ゲルトルートさんと俺が良く一緒にいるから、兄さんがよくじーっと俺たちの様子を見ている。……兄さんはゲルトルートさんに本当に惚れちゃってるっぽい。いつか告白とかしたりするんだろうか。そんなことなったら色々と修羅場になりそうな気がする。
ゲルトルートさんが村から去るってことになったらそういうことになるんだろうか?
まぁ、いいや。
そういうことはそうなった時に考えよう。
俺はノアレに追いつくために忙しいから、兄さんの恋愛事情とかに関わっている暇は一切ないしなぁ。うんうん、もし兄さんが修羅場になってもそれは兄さんが片づけるべき問題だもんな。俺には関係ない。兄さんがハーレム作ろうと、誰を選ぼうと、その時はその時だ。
まぁ、兄さんがそういうことになる時は俺はもう学園にいっている気がするけどさ。
今は言えの手伝いをしている。五歳になったから体も丈夫になってきたし、手伝いの最中も身体強化を使ったりして鍛錬に励んでいる。
せっせと手伝いをしながら、家の手伝いもうまく出来るようになることは嬉しい。将来的に俺がノアレとどんな暮らしをしているかは分からないが、どんな経験だって、未来での糧になると思っているのである。
将来的に番になれて、一緒に農村とかで暮らしてたとしてもそれはそれでノアレがいれば俺は幸せだと思う。まぁ、そんな未来のためにはノアレに勝てるようになんなきゃならないんだけどさ。
ノアレ、ノアレ、ノアレって俺はノアレのことばかり考えている。それこそ両親や兄さんが呆れるぐらいにずっとノアレのことしか考えていない。
結局俺が頑張っている全ての事はノアレに好きになってもらえるように、強くなるためにって行動でしかない気がする。自分でもびっくりするぐらい、俺はノアレって存在が好きで仕方がないのだ。
さてそんな風に毎日過ごしていた中で、商人がやってきた。
村に商人がやってくることは、たまにあることだ。この小さな村にやってくる商人はあまりいない。なのでやってくる商人はいつもやってくる商人だけである。もっとこの村が大きな村や街だったらもっとたくさんの商人が訪れるだろうけど、この村って小さな辺境の村だからなぁ。
そんな商人がやってくるとはいっても直接俺が買い物をするってことは今までなかった。だって俺は子供だし、硬貨についてもこの前知ったばかりだしなぁ。
っていうか、商人とのやり取りは基本的に大人がメインでやってたし。
だけど、今回は俺も五歳になったし、いずれ学園に向かうことになるから、ってことでもっとお金についても知っておくべきだってことで父さんと一緒に商人の元へ向かっている。
俺がお手伝い頑張っているってこともあって、お小遣いも少しくれるらしい。兄さんの分は別にためてあるそうだ。兄さんはあんまり商人からの買い物とかに興味ないみたいで母さんが預かっているんだとか。
たまに兄さんは周りの幼馴染たちにプレゼントあげたりしてるけど、それは物々交換したり、自分で作ったりしたものが多いっぽい。たまに母さんに預けているお金使ってることもあるらしいけど、滅多に使わないんだとか。まぁ、この村で完結している生活していたらあんまり硬貨いらないからなーって思う。
俺は村の外に飛び出していくことが決まっている。なので硬貨の事も知っていなければならないのだ。
世間を知らない状況のまま外に出たら俺も騙されたりしそうだし。うーん、買い物とかも自分で出来るようにもっとしていかなきゃって思う。
ノアレに一緒に学園の方に向かった時に、ノアレにかっこ悪いと言われたくないし。
例えば、ほら一緒に買い物いってぼったくられるとか最高にかっこ悪い。こう、物の価値とか分かる感じになりたい。うんうん。寧ろノアレのピンチに駆け付けられるようになりたいなーとか願望が湧いてきている。
「ユーリ、楽しそうだな」
「うん!! 俺は買い物ももっとちゃんとマスターする!」
俺が笑顔で行ったら父さんに頭を撫でられた。頭を撫でられると安心する。子供じゃない! って恥ずかしい気持ちになるけれど、まだ子供だし大人しく撫でられる。
そして俺は父さんに手を引かれて、商人の元へと向かったのだった。




