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うさ耳くんと、初めての魔法 1

 ノアレが帰っていった。

 また来年にならないとノアレに会う機会はない。そう思うとちょっと寂しい。

 でも来年こそは、ノアレに勝てるように俺は頑張る。ノアレが大好きだから、ノアレに勝って、少しでも俺の事を考えてもらうんだ。

 ノアレに会った後の俺のやる気は普段より高くなっていた。

 やる気満々で魔力を感じる練習をする俺をゲルトルートさんは初恋っていいわねーとにこにこと笑っていた。ゲルトルートさんの初恋は随分昔らしい。エルフだと長命だろうし、俺が生まれるよりずっと前なのかもしれない。

「初恋は実らないっていうし、実る事はなかったけど――。あ、でもきっとユーリの初恋は実るわよ。これだけ頑張ってるんだし」

「うん! 俺、初恋が実らないなんて信じない。寧ろ、それをぶち壊すぐらいの勢いで頑張って実らせる!!」

「ふふ、その意気だわ。私も応援するから」

「うん! ありがとう、ゲルトルートさん」

 俺は頑張るんだ。折角魔力があったんだから、まずは魔法を使えるようにならないと。ノアレはもう魔法が使えるんだから。まずは第一にノアレに追いつくことを考えないといけないのだ。

 魔力を感じるために俺は唸ってる。しかしこの、魔力を感じるって中々難しいのだ。ゲルトルートさん曰く、魔力を感じるのは人によってはかなり時間がかかるものらしい。俺ははやくノアレに追いつきたいのだという意志で唸ってるけど、難しい。

 魔法って難しいんだなと思うと、もう魔法が使えるようになっているノアレってすごいと思う。ああ、俺の好きな子ってすごいんだなって、益々大好きだって気持ちが湧いてくる。

 俺の好きな子は凄くて、可愛い。そして俺よりも先にいる。俺が追い付いたと思ったらもっと先にいるのがノアレだ。いつ追いつけるんだと言う気持ちになるけれども……、いつかノアレに凄い、かっこいいって言われたい。そんな未来が来るように俺は頑張りたいんだ。というか、そんな未来を俺はつかみ取るんだ。


 そんな思いを抱えながら、魔力を感じようと頑張った。



 そしてノアレが村に帰っていってから二週間後、ようやく俺は魔力が分かるようになった。遅いとか言われるかもだけど、魔力何て感じようとするの初めてだし、これでも平均的な期間なんだぞ。遅い人はもっとかかるらしいのだ。

 まぁ、一発で魔力を感じられるとか、魔力を感じるのがはやくて「凄いわ」「天才だわ」と言われてみたかった気もしなくもなかったが、無理なもんは無理だった。うん、魔力って感じるの結構難しい。

 なんというか、俺は少しずつしか強くなれないのだ。よくあるチート能力何てのもないし、試行錯誤しながらノアレに勝てる俺にならなければならない。

 難しい道だけど、少しずつ形になってきているのは分かるので嬉しい。

「魔力が分かった」

 と口にしたら、ゲルトルートさんは自分のことのように喜んでくれた。

 本当に、ゲルトルートさんっていい人だなと思う。文字や魔法を教えてくれることも、断ってもいいことなのに喜んで教えてくれるし。

 うん、俺ゲルトルートさんの事が結構好きだ。もちろん、恋愛的な意味での好きはノアレにだけだけど、ゲルトルートさんはなんというかお姉さん的な意味で慕っている。

「じゃあ魔法を使ってみましょうか。それも一筋縄ではいかないだろうけど、魔力を感じ取れるのならばそのうち使えるようになるはずよ」

「うん、俺、頑張る」

 ゲルトルートさんが一筋縄ではいかないと言った通り、すぐに魔法が使えたりはしなかった。まずは感じ取った魔力を集める事が出来るようにならなければならないらしい。この集めるというのが難しいのだ。下手に失敗すると魔力爆発と言って、大変なことになるらしい。

 それを聞いて正直少し恐怖した。ただゲルトルートさんがそうならないように見てくれていると言っていた。もし魔力爆発したとしてもどうにかするとも言ってくれたので安心して魔力を集めようとしている。強くなろうとしているのならばリスクは当然あるのだ。魔力爆発が起こるかもしれないからなんだ、ノアレに勝つって決めたのだ! と言う強い思いで俺は頑張る事にした。

 もし魔力爆発が起きたら――なんて、もしの話を言っていたらそもそも何もできなくなるし。

 体の中の魔力を操作するのも難しくて時間がかかった。ゲルトルートさんは根気強く俺に付き合ってくれた。

 狩りや家の手伝い、あとは個人でやっている体力づくりや五感を塞いでの動きなどをやる以外はゲルトルートさんに面倒をみてもらっていた。本当に頭が下がる思いだ。

 魔力を集める操作にも一週間ほどかかったが、大分うまくいくようになってきた。

「じゃあ、魔法使ってみましょうか」

「うん!」

 そして、ようやく俺の初めての魔法行使がこれからなされる。魔法を使えるんだと思うと、妙な高揚が湧いてくる。でも下手に興奮していたら失敗しそうなので、もっと緊張感を持たなければと気合を入れた。



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