赤ちゃん生活、うさ耳くん ②
目が少しずつ見えるようになってきた。まだ完全に見えるわけではないけれど、よくやってくる兄さんは将来美形になりそうな感じの少年だった。兄さんがこれなら俺だってワイルド系とか、かっこいい美形になれたりしないだろうか。兎の獣人って、この世界ではどういうものなんだろうか。マッチョのうさ耳とか視界に暴力になりそうだしな。うさ耳が似合いそうだとやっぱ美少女とか、美少年とか言われる分類の存在だと思うが……。でもかっこいい系の大人になりたい。
……時折見かける父さんが背が高いからまだ希望はあるか? でも母さん凄い小さいんだよ。その血を受け継いでいる気がひしひしとするのだけれども、どうなんだろうか。
母さんの名前はメナというらしい。そして父さんの名前はガドウというそうだ。家とかそこまで立派というわけでもないし、今の俺の家がある場所って村とかそういう場所だと思う。外に出たことないから正確には分からないがな。
今日も兄さんは俺のことを覗き込んで、楽しそうに笑っている。弟が出来たのが嬉しいという態度を前面に出す兄さんを見ると、何だか嬉しくなる。それにしても兄さんは……見た感じ4,5歳ぐらいか? 母さん凄く若く見えるけれど、見た目以上に年齢が高いのかもしれない。俺の世界はまだ母さん、父さん、兄さんしかいない。外の世界、どうなってるんだろうか。
俺達家族は獣人だけど、他の種族もこの世界には沢山いるのだろうか。興味が尽きない。速く色々聞いて回れるぐらいの年齢になりたい。
「ユーリ、ユーリ」
そんなことを考えている俺の名を兄さんは何度も楽しそうに呼ぶ。俺が視線を向ければそれはもう嬉しそうに笑っている。……兄さん、女の子に凄いもてそうだなと正直な感想が漏れた。
「ユーリ、早く大きくなれよ」
「ユーリ、一緒に遊ぼうな」
兄さんが何度も何度も声をかけてくれるのも言葉が理解出来てきたのだと思う。だからこそ兄さんには感謝している。
しかしがたいがよさそうな兄さんと一緒に大きくなれるか怪しい俺が遊べるのだろうか。ちょっと不安になる。俺も犬か狼か分からないが、そっちの獣人の方が良かったなと思うけど、それいったら母さん悲しむかな。
でもあれだな、か弱い見た目で実は強い系の兎の獣人を目指すのは楽しいかもしれない。弱そうに見える存在が実は強い、というのは俺が地球に居た頃から好きだった設定だしな。しかし、この世界のこと知れるようになりたい。兄さん、俺ににこにこしながら話しかけてくれるけれど、この世界についての情報なかなか話してくれない。というか、兄さんもそんなに知らないのじゃないかと思う。
俺はまだ言葉が喋れない。喋ろうとしても「あー」とか「うー」とかである。もっと言葉が話せるようになったらいいのだけど、今はまだ無理。しかし、一番最初に喋る言葉はやはり、「ママ」か、「パパ」が定番だろうか。しかし心の中では母さん、父さん呼びなのに口にするのは多分「ママ」か「パパ」になるだろう。兄さんには、「にぃに」とかか? ちょっと恥ずかしいが、それが無難な気がする。いきなり母さん、父さん、兄さんと赤ん坊がしゃべりだしたら不気味だし。
それにしても色々考えて、何か伝えるために泣いて、そうしていたらまた眠くなってきた。赤ん坊って本当眠い。
寝て、泣き喚いて、寝る。
そんな生活をずっと続けている。気づいたら、結構な日付が立つ。母さん、父さん、兄さんの顔は幸せそうで安心する。家族以外の人は今の所一切見かけていない。俺も外には一度も出ていない。一家だけで辺境に食わしているとかあるのかな、それとも赤ん坊は死にやすいから外に出さないようにしているとかあるのかな。さっぱり分からない。
早く外に出れるようになりたい。異世界は、どんな景色なのだろうか。
早く外に出たいなと思ってならない。
それと、俺の初めての言葉は無事に「ママ」になった。下手に転生して意識があるからこそ、そんな言葉を話すことに関しては緊張して仕方がなかったけれど、なんとか言葉を発した。いや、なんか母さんも父さんも兄さんも、俺が何を一番最初に喋るかって俺の周りで話したりしていたから妙に緊張したんだよ。パパとにぃもちゃんと言ったぞ。三人とも驚くぐらい喜んでくれていて、俺は愛されているって実感が感じられて、俺はとても心があたたかくなった。
ちなみにもうハイハイはマスターしていて、最近はつかまり立ちや伝い歩きを一生懸命しようとしている。兎耳と尻尾があることも少しずつなれてきた。鏡を見れば見るほど、愛らしい赤子がいる。俺、これ他人で性別言われなきゃ女の子と間違うレベル。将来俺大きくなれるかなーと心配しながら、気づいたら俺は一歳になってたらしく、お祝いをされた。
そして、俺は初めて外に連れ出された。