うさ耳くんと、初めての狩り 2
「ユーリ、狩りの時は――」
兄さんは俺が狩りに行くのは反対していたが、いざ狩りが始まると熱心に教えてくれる。
まずは、狩りでの歩き方。
兄さんは俺よりも年上で、もう何度も狩りに同行しているのでそういう事をきちんと実践できるらしい。素直に凄いと思った。狩りの場合は、獲物に気づかれないように歩く必要がある。音を立ててしまったりしたら、魔物に気づかれてしまう。獲物を狩るという行為は決して簡単ではなく、命を失ってしまう可能性も十分にあるのだ。だからこそ、危険のない村の中を歩くのとは違う。
こういう狩りでの歩き方を日常で出来るようになりたい。その方がきっと俺は強くなれると思う。そう思うからこそ兄さんが教えてくれる事を聞き洩らさないようにしながら、実践していく。
「ユーリは筋がいいな」
「ほんと?」
兄さんに褒められて、つい嬉しくなってしまう。
今までの地道な特訓の成果が出ているのか、こうして狩りに出かけていても息切れもすることがなかった。何だか努力の成果が出ていると思えて嬉しかった。
しばらく皆と一緒に足を進めると、前方にいた人に止まるように言われた。
どうやら獲物が見つかったらしい。
―—その獲物をじっくり見る。
ウサギのような魔物である。地球にいたものより一回り大きくて、真っピンクの毛を持っている。
まずはお手本を見せるといって、兄さんと兄さんに惚れている女の子――カーキ姉ちゃんが二人で向かった。
ひっそりと近づいて、一気に長剣を振り下ろす。
首元に突き刺せば、そのウサギは「きゅううううう」と絶命の声をあげて、動かなくなった。
目の前で生物が絶命するのを見るのは初めてだったので、心臓が痛いぐらい動いている。
生きている者を殺すという行為は、地球の記憶がある俺からしてみるとやはり何とも言えない気持ちになる。顔色が悪くなってしまっていたみたいで、父さんに「狩りはやはりユーリにははやかったか?」と言われたが、首を振った。
「大丈夫」
確かに怖いという気持ちは強い。でも俺はこの世界でちゃんと生きていくって決めた。生きていくために狩りは必要だし、いざ、殺さなければ死ぬという事になってしまった時に動けないのは困る。
命のやり取りなんてしないで済む方がいいだろうけど、この世界では盗賊とかもいるし、冒険に出たいというのならば多分いずれ人ともそういう命のやり取りをしなければならない。
だからこそ、怖くても俺は頑張りたい。
そう決意の目で父さんを見れば、父さんは俺の本気が見て取れたらしく「じゃあ頑張らないとな」と言って頭を撫でてくれた。
その後、兄さんが倒したのと同じ魔物がいたので「やってみるか?」と聞かれてやってみる事にした。ただ、俺の場合兄さんたちのように気づかれずに近づく事が出来ずに素早いスピードで逃げられてしまった。あの魔物はウサギの魔物というのもあってすばしっこいらしかった。
何度も何度も挑戦して、何とか短剣を魔物に突き刺す事が出来た。とはいえ、突き刺す場所が悪かったらしく一撃で絶命させられなかった。何度もさしてようやく倒せたが、そういう倒し方だと獲物が痛んで駄目らしいというのも教えてもらえた。
狩りというのは難しい。
それぞれの魔物に弱点となる部分もある。何処に差したら素材が丸々残るのかとか、そういう知識はやっていかなければ学べないだろう。
魔物図鑑とかあったら便利そうだけど、この村は識字率も低いしなぁ。学園に行ったら図書館とかもあるのだろうか。
まずは狩りについていって、この村の近くにいる魔物の急所などを覚えていくことが先だけど、将来的にはそういう魔物図鑑とか読みたい。いや、いっそ、ないのなら自分で魔物図鑑とか作ってみたいなーとか思った。
その日の狩りは、時々倒すのを手伝わせてもらいながらも大体が見学や話を聞いていて終わった。初めての狩りなのでそれも仕方がない事だろう。
それにしても父さんも兄さんも流石狩りを何度も経験しているというべきか、手馴れていて「凄い!」と素直に賞賛の言葉が口から出てきた。キラキラした目で見てしまったのか、父さんも兄さんもその日の狩りはいつもより張り切っていたらしい。他の人達が言ってた。
カーキ姉ちゃんは「張り切っているコーガかっこいい」ってまた惚れ直したようだ。なんか兄さんにはイケメン爆発しろってたまに言いたくなる。言わないけど。
狩りが終わってからは、解体作業を見学した。正直言ってとてつもなくグロかった。吐くかと思ったが我慢した。兄さんも初めて見た時、吐いてしまったらしい。倒した獲物を掻っ捌いていくのには技術がもちろんいるようだ。
食べられない部分を排除していって、皮とかを傷がつなないようにはいでいったり、うん、大変だ。
こうして手に入れた部位を商人に売ったりしているので、使い物になるように丁寧に倒して解体をする必要がある。
俺にはその技術が全くないので、これから覚えていこうと思う。




