うさ耳くんと、初めての狩り 1
魔力検査が終わって村に戻った。
村に戻った時、俺があまりにもにこにこしていたから魔力があった事は一目瞭然だったらしい。兄さんが「ユーリは顔に出るよな。可愛い」と言ってた。俺の精神年齢は高いはずなのに……と何度目かも分からない事を思うが、まぁ、体に引きずられているんだと言い訳をしておく。
兄さんも母さんも俺に魔力があった事を喜んでくれたが、少しだけ複雑そうな顔をしていた。魔力がなければ俺が強くなる事を諦めるのではないかと期待していたようだった。危険な事をしてほしくないと二人が思っている事は当然知っている。でも俺は転生者で、ファンタジー世界に憧れている。何よりノアレに惚れてしまったから、強くならないという選択肢はないのだ。
ゲルトルートさんは素直に「よかったわね! 魔法について教えるわ」と喜んでくれた。嬉しかった。
魔力があったので、ノアレに追いつけるように俺は頑張らなければと気合を入れる。
魔力があったというのは俺にとってのスタートラインだ。これから魔法を覚えていって、ノアレにふさわしい男にならなければならないのだから。……見た目は、うさ耳もついているしかっこいい男になれるかどうかは分からない。正直、男らしい男になるのは難しいかもしれないと流石に五歳にもなれば理解する。とはいえ、男は見た目ではない! はず……。中身をノアレにかっこいいって思ってもらえるように男を磨ければ大丈夫なはずと俺は信じている。
俺に魔力があったと母さんと兄さんに伝えると同時に、父さんは俺を狩りにつれていく事を二人に告げた。心配性な二人は「ユーリにはまだはやい」とか言っていたけど、なんとか説得して狩りにいける事が決まった。良かった。
どれだけ強くなろうと努力をしたところで、実戦経験がなければいざ、戦いとなった時にノアレを守れないかもしれない。
ノアレを守って、自分の身を自分で守れるようになりたい。
そのためには、狩りは良い戦闘訓練になる。
それまでの間に、魔力を感じられるようになれたら、漫画とかで見るような魔力探知的なのも出来るようになるのではないか! と期待していたけれど、初めての狩りに出かけるまでの間に魔力を感じられなかったので、ちょっとがっかりした。まぁ、仕方がないので、俺は諦めて魔力を使った狩りは次の機会とすることにした。
魔力探知とかがこの世界にあるかどうかも分かってないけれど、やろうと思えばできるんじゃないかと勝手に期待している。狩りが終わったらゲルトルートさんの元へ行って、魔力を感じられるように練習しないと。それにしても俺、ノアレに出会ってから暇さえあれば訓練ばかりしているなーなんて思う。まぁ、ノアレとこれからもずっと一緒にいるためには強くならなきゃだし。まずはノアレに勝たないと!
父さんは狩りの道具として、俺がまだ小さいのもあって短剣を持つ事を許してくれた。
正直、こういう刃物を持つとドキドキした。父さんには何度もこれは武器なので扱いを気を付けるようにと言われた。
狩りにいくメンバーの中には父さんや兄さんもいる。
「ユーリ、俺が絶対に守るからな!」
……兄さんにとってあくまで俺は守るべき対象であるという認識のようだ。俺は守られるよりも、誰かを守れる存在になりたい。そう思うけれど、まだ小さいから守ると言われるのも仕方がないのかもしれない。でも兄さんにとっていつまでも守る存在と認識されるのは男として嫌だ。いつか、兄さんにも一人前
認めてもらえるぐらい強くなれたらいいなと思う。
ちなみに今回、兄さんに好意を寄せている女の子も一人参加している。その子は兄さんからの好感度をたいのか、俺に仕切りに構っていた。本当に、兄さんはモテモテだ。今はゲルトルートさんに初恋を抱いている兄さんだけど、最終的にどんな結末を迎えるのか気になるものだ。まぁ、それが分かる前に俺は魔法学園に行きそうな気がするけど。
俺が初めての狩りというのもあって、村の獣人達は俺に気を使ってくれている。本当に良い人達ばかりだ。変な修行とかしている俺に対しても迫害とかするわけでもなく、受け入れてくれていて、だからこそ俺はこの村が結構好きだったりする。
それにしても、狩りか。
……狩りって、要するに生き物を殺すって行為だ。そう思うと、心臓がバクバクする。この世界に生まれて、この世界で生きていくのだから、狩りは出来るようにならなければならない。
俺の生まれが貴族階級だったら、狩りなどしなくても与えられるだけだったかもしれないけれど。獣人の村で生まれた俺にとって、狩りは必須な事だ。
―—ノアレにかっこいいって言われるためにも、この世界で生きていくためにも、狩りをこなせるようにならないと!!
俺はそんな決意をしながら、狩りのメンバー達と共に村を出るのだった。




