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うさ耳くんと、魔力 1

 俺は猛烈にドキドキしている。

 転生してから、いや、転生前からもこんなにも緊張した事はあったのだろうか。いや、ない。

 というのも、今日はようやく待ちに待った魔力検査の日だ。

 ―—ノアレは魔力を手にした。今度、ノアレがこちらにやってきた時に、魔力があったって俺はいいたい。

 さて、魔力検査なのだが、村から少し離れた大きな街でやるそうだ。五歳の誕生日が過ぎてから指定されている教会にいき、魔力検査をするようになっているらしい。ちなみに義務付けられているので魔力検査は無料らしい。

 まぁ、交通費がなくて街まで来れない人もいるから数年に一度は魔力検査漏れがいないか国から使いがくるらしい。その時に検査するとかになったら大分後になってしまう。俺は早く結果が知りたかった。そんな俺の気持ちを知っている父さんはちゃんと街まで連れてきてくれた。

 自分の村とノアレの村以外に行くのは初めてだった。

 街について人間がいっぱいいておおっとなった。俺の住んでいる村もノアレの村も獣人の村だけど、街に出ると獣人よりも人間の方が多い。今世では人間って全然見た事なかったけど、やはり人間を見ると元人間の身だと少し懐かしい気持ちになった。

 そうだよな。俺、今はうさ耳とうさ尻尾に五年で慣れてしまっているけれど、元々なかったんだよなぁと不思議な気持ちになった。

 まだ五歳なので父さんに手を引かれて、教会へ向かう。途中でお店とかが色々あって、つい見てしまった。だって俺の住んでいる村は結構小さくてこんなにないし。そういえばお金の単位きちんと知っているわけではない。父さんにこれを機に聞こうと思った。まぁ、まずは魔力検査だけど。

「ユーリ、緊張しているのか?」

 手を繋いでいた父さんが俺の方をふりむいて、俺の顔を覗き込む。

 魔力検査の結果がどうなるのだろうかとドキドキしていつも以上に喋ってなかったから、父さんは心配になったようだ。

「うん。俺、魔力、絶対欲しい。でもないかもしれないし……」

「ユーリ、なくても気にしなくていい。俺達獣人はない方が自然だからな」

「でも、あってほしい。ノアレに追いつきたい」

「はは。ユーリは何時もノアレの事ばかりだなぁ」

 父さんは俺の発言にそう言って笑った。

 ノアレ。

 俺より一つ上だから、魔力があると分かって、魔法が使えるようになってたりするだろうか。一つの年の差が何だかもどかしい。俺やノアレぐらいの年齢だと一歳の差が大きいし。というか魔力があるのは聞いたけど、属性も聞いていないな。

 うーん、ノアレの場合、何か強そうなのな気がする。

 あー、ハラハラする。なんとかノアレに追いつけるように魔力があってほしい。

「ユーリは、魔力がなくてもあきらめる気はないんだろう? だったらなかったらなかったで割り切ると考えて、そこまで緊張しなくていいんじゃないか?」

「魔力がなくてもあきらめないけど、魔力は欲しい!! 魔法はロマンなんだよ!!」

 転生者の俺にとってみれば魔法なんてものは、出来れば使ってみたいものだ。ノアレにもし出会ってなかったとしても俺は魔力が欲しいと願っていたはずだ。

 

 そんなこんな話していたら教会にたどり着いた。


 教会は大きかった。村にはこんな大きな建物はない。というか、この世界の宗教とかどうなってんだろう。うん、色々、俺の世界は狭くて、分からない事が多い。

 ノアレと一緒にいるためにも俺、もっとたくさんの事を学ばないと。

 中に入ると何人かの子供がいた。彼らも魔力検査待ちらしい。

 順番に魔力検査をするそうなので、俺はしばらく椅子に座って待つことになった。父さんにそうしている間に聞いたけど、王族とか貴族とかだと家で魔力検査をしたりするらしい。というか、王族とか貴族とか見た事がないから本当に要るのかって気分になった。でもこういう異世界って身分制度が凄そう。俺、もし関わる事になったら、下手な態度取らないようにしないと。不敬罪とかにされたくない。

「父さん、魔力検査終わったら街を見てもいい?」

「ああ。構わない。今夜はこの街に泊まるから、明日も昼ぐらいまでは自由に出来るぞ」

「本当? なら、色々見たい」

 ……まぁ、今日の魔力検査で魔力がなかったら、俺は明日落ち込んでそれどころじゃないかもだけど。いや、魔力があったとしても、魔力があったぞーっと嬉しくて仕方なくてそれどころじゃない可能性もあるか?

 ああ、本当にうずうずする。

 魔力検査は個室で行われるみたいで、前に呼ばれた子供は魔力がなかったみたいで、しょんぼりしていた。それが少し未来の俺の姿ではなければいいけど。そういう姿を見るとより一層ハラハラした。

 父さんと話しながら緊張を紛らわしながら、待っていた。そしたら、ようやく呼ばれた。父さんも一緒に来てくれるらしい。

 個室の中に入れば、神父さんがいた。神父さんは、まだ若い茶髪の男性だ。ちなみに人間。

「こんにちは。五歳の誕生日おめでとう。この水晶に触れたら魔力があるか分かるからね」

 神父さんはにこにこと笑ってそういってくれた。その優しい笑みに少しだけ緊張がほぐれる。

 神父さんが言う水晶は、大きかった。俺の顔より大きい。まんまるとした水晶玉。これに触れたら、魔力があるか分かる。

 ……俺はドキドキしながら、その水晶に手を伸ばした。





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