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うさ耳くん、エルフのお姉さんと話す②

「魔法の種類については知っているの?」

「うん。赤、青、黄、緑、黒、白、ムでしょ? それぞれ火、水、風、地、闇、光、無と対応するって聞いたよ」

「うん。そうね。よくお勉強しているわね」

「うん! 俺、魔法使ってみたいから」

「見た事はある?」

「ううん。ない」

「そう、じゃあ少し見せるわね」

 ゲルトルートさんがそんなことを言ってくれた。俺はわくわくした。子供のように興奮して、「本当!?」と口にしていた。

 ゲルトルートさんはそんな俺に笑って、口を開いた。


「黄色の魔力よ、我が命に応え、その姿を現せ。

《そよブリーズ》」


 俺の視線の先で、急に風が現れて、草を揺らしたのが分かった。

「これは簡単な風を起こすだけの魔法だわ。やろうと思えばもっと強い風にすることも出来るし、私はこの位の魔法なら詠唱破棄でも使う事が出来るわ」

「うわー、凄い!!」

 簡単な魔法と言ったけれど、自分の魔力から何かを生み出すなんてそれだけでも俺にとって興奮する事だった。

 だって魔法だ。

 地球ではそんなものありえなかった。物語の中でしか存在しないもの。異世界に本当に来たんだなって四年目で一層実感した。まぁ、それを言うなら、俺についているうさ耳と尻尾も十分ファンタジーなんだが。

「ゲルトルートさんは、どの属性が使えるの? 黄の魔法ってどんなものがあるの? 実際に魔物と戦う時とかはどんな魔法を使っているの? エルフの人って、やっぱり魔法って得意なの?」

「ふふふ」

 一気に色んな事を聞いたら、ゲルトルートさんは愉快そうに笑った。はっ、す、すごく俺子供っぽい事やってしまった。一応、精神年齢含めればいい歳なのにと思うが、やっぱり魔法には興奮する。

「質問に答えていくわね。私はまず幸いにも全属性使えるわ。もちろん、得意不得意があるけれど。黄の魔法だと、風の刃を起こす魔法や風の障壁を生み出す魔法など沢山のものがあるわね。魔物と戦う時は火を起こして焼いたり、後は風を起こして魔物にとっての毒物を振りまいて倒したりも時にはするわね。エルフは確かに魔法が得意な種族よ。あとエルフは精霊魔法の使い手が多くいるわ」

「精霊魔法? それって何??」

 何だか知らない魔法が語られた。名前から何となくどんな魔法か想像できるけれど、なんだかその言葉を聞いただけで面白そうで目を輝かせてしまう。

「エルフは精霊が見える人が多いから。その力を借りて魔法を使うの。私も精霊と契約をしているわよ。此処にいるけど、見えないわよね?」

 ゲルトルートさんの肩を指さされたけれど、俺には一切その姿は見えなかった。うっすらとでも見えたら面白いのに。というか、精霊とか摩訶不思議な存在がこの世界にいるのか。出来たら見たかった。

「見えない……」

「ふふ、落ち込む必要はないわ。エルフ以外は見えない人が多いの。だから精霊魔法を使うのはエルフが多いわ。精霊魔法は精霊の力を借りて魔法を使うものよ。その分、自身の魔力の消費が少なくて済むの。ただ、私はたまたま契約は出来たけれど、エルフの中でも精霊と契約を結んでいる人は数が少ないわ。契約を結ばずに精霊に頼んで魔法を使う場合は、精霊は気まぐれだから思ったように魔法が使えないこともわ。まぁ、契約していても時と場合によっては断られたりするのだけど」

 ……精霊って想像していたより気まぐれらしい。扱いは難しいけれど契約をしたら便利な存在なようだ。見えなくても契約をしたり、精霊の力を借りられたりしたらいいのに。……出来るかいつか試してみようと思った。

「魔力があったら、無属性の魔法は使えるんだよね?」

「ええ、そうよ。色の適性がなくても無属性の魔法は使えるわ。無は身体強化などがあるわね。うさぎの獣人であるユーリなら、魔力があったとして無属性だけか、加えて白魔法が使えるかになるんじゃないかしら?」

「そうなの?」

「ええ。うさぎの獣人で有名な魔法使いだと白魔法師が多いわね」

「へぇー」

「私も一人だけ知り合いにいるけれど、とても治癒の魔法が得意な子だわ」

「……た、戦う方面は?」

「あまりいないわね……。ユーリは戦いたいの?」

「うん! 好きな子が勝てたら考えてくれるって言ってた。それに俺、冒険してみたいから」

「うーん、そうなのね。難しいとは思うけれど……。魔力があったとしても、無属性だけしか使えない場合もあるだろうし」

 やはり、難しいと言われてしまう。俺が父さんや兄さんみたいな狼の獣人だったらこんな風に言われないんだろうなと思うと少しだけ凹んだ。母さんとお揃いのうさ耳は嫌いじゃないけれど、狼の獣人だったら――と考えてしまう。

「……無属性って、やっぱりあんまり使えなかったりするの?」

「身体能力強化をうまく使った冒険者もいるわ。それこそ体を鍛えれば無属性しか使えない冒険者も多くいるわ。ただ無属性の攻撃魔法は色持ちの魔法の劣化版な事が多いの。同じような魔法でも、赤の魔法なら火を付加しているものになるわけで、無属性はボール系の魔法でもただのボールでしかないというか……。それに、うさぎの獣人は急所が狙いやすいから……」

 ……やっぱりこの長いうさ耳は冒険者としてやっていくには色々と不便らしい。

「それは分かっているよ。ねぇ、ゲルトルートさん、身体強化の魔法って、体を動かしやすくするだけなの? 身体強化の魔法を使ったら刃物が通らないとかあるの?」

 身体強化の魔法と聞いて、体のスピードがはやくなるというイメージ。身体能力を向上させ、運動能力を通常以上にする魔法だと思うけれど、無属性の魔法で体に何かしら変化を与えられるのならば刃物が通らないようにとかもできるのだろうか、とか思ったので聞いてみた。

「硬くすることは、そうね、やろうと思えばできるわ。ただ、その分普段の時とのズレがあるの。身体能力強化で単純に運動能力を向上させるだけでも、使った後に普段とのズレから体が動かなくなったりする人も多くいるわ。体全身を刃物が通らないように硬くするのは難しい魔法だと思うわ。カッチカチに硬くするわけで、魔法を解いた瞬間酷い硬直状態に陥るのではないかしら。それにその分、体が重くなると思うわ。刃物が通らない程硬くとはいっても、全身に魔力をまぐらせてそんな魔法を使うのは長時間は出来ないでしょうし、達人の剣は届いてしまうのではないかと思うわ」

 ゲルトルートさんは子供の俺の質問に、その後も沢山答えてくれた。





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