うさ耳くん、エルフのお姉さんと話す①
ゲルトルートさんは、この村に滞在するらしい。
色んな場所を巡って、研究をしている人らしいのだ。俺の村には来た事がなかったから来てみたんだそうだ。
俺はその話を聞いて、興奮した。
だって、どんな景色を見てきたんだろうかとか、そういうのが気になった。俺は折角異世界に転生したのだから沢山の物を見に行きたい。家族は反対しているけれど、冒険したいという気持ちがやっぱり強いのだ。だからこそ、ゲルトルートさんのような人に興奮しないはずもない。
それにさ、エルフって魔法とかが得意なイメージがあるから。
俺はまだ魔法が使えるかどうかも分からないけれど、魔法について学ぶのは悪い事ではないと思うんだ。たとえ、魔力がなくて魔法が使えなかったとしても魔法を学ぶことで魔法に対して対処が出来るようになるかもしれないし。魔法が使えた方が嬉しいけど、使えなかったとしても魔法が使えるノアレに勝てる俺でありたいのだから!
うん、やっぱりゲルトルートさんから話を聞きたい! と思った俺は早速ゲルトルートさんに話しかけた。
「ゲルトルートさん!!」
「ユーリか、どうしたの?」
ゲルトルートさんは、草むらに腰かけてなぜか絵を描いていた。何で絵を描いているんだろうと不思議に思いながらも俺はゲルトルートさんに近づく。
「話をしてほしいんだ! あと何の絵を描いているの?」
「この村の絵だよ。忘れないように私は訪れた場所の絵を描くようにしているから」
「へー! ゲルトルートさん、絵を描くの上手」
覗き込んだ絵は俺の住んでいる村をよく現していて、絵を描くの上手だなぁと驚いた。
なんだろう、エルフって手先が器用だったりとかのイメージがあるけれど、そういうのかな? 絵とかも上手に描くし、芸術的な事にたけているイメージ。本当にそうかは分からないけど。まぁ、とりあえずゲルトルートさんは、俺にとって想像していたエルフそのものだ。
「ありがとう。それで、話をしてほしいってのは?」
「色んな話をしてほしいんだ! 俺、いつか冒険したい。だからどんな冒険してきたのか聞きたい。それに、魔法についても聞きたい。エルフって魔法が得意なイメージだから。というか、何でも知らない事は聞きたい!!」
そんな風に声をあげたら、クスクスと笑われてしまった。俺って転生者だし、前世からの記憶があるにも関わらず本当に体に精神が引っ張られている気がする。……いや、まぁ、下手に大人びた態度して親から訝し気にされたりするよりはいいと思うけど。俺一応、精神年齢はずっと年上のはずなのに! でも引きずられている者は仕方がない。
「ユーリは、今何歳なんだっけ?」
「俺? 俺は四歳!」
「じゃあまだ魔力があるかどうか分からないのね」
「うん! でも俺魔力があってほしいんだ!」
「……そうね。あったらとても素晴らしいわ。でも獣人は魔力をほとんど持っていないものだから期待をしすぎると大変だわ」
「知ってる!! もしなかったとしたらへこむけど、でもそれならそれで魔法に対処できるように頑張る」
そう言い切ったら、またゲルトルートさんはクスクスと笑う。その表情はとても綺麗だ。ゲルトルートさんは美しい見た目をしているから、この村の年頃の男達がゲルトルートさんが顔を赤くするのも分かるうものだ。
俺はノアレ一筋だから顔を赤くなんてしないけどな! ノアレに振り向いてもらうためにも他に目を向けたりなんてしない。というか、他の異性は今の所、興味がない。俺の心を占めているのはノアレだけなのだ。
このあふれんばかりの気持ちをもっとノアレに告げたくなるけど、まずはノアレに勝ってからだ。ノアレに勝利する事が出来たらもっとちゃんと大好きだって伝える。うん、そのために俺は頑張る!
「そうね。じゃあまずは、私がどういう所に行ったかを教えましょうか」
「ありがとう!!」
わくわくしながら俺はゲルトルートさんを見つめる。
ゲルトルートさんがそれから語ってくれたのは、俺の見た事も行った事もない景色についてだった。
例えば海のある街。前世では海は見た事があるけど、今世では見たことがない海。異世界の海も地球と同じ海なのだろうかなどと思いながら聞いていた。でもクラーケンとか恐ろしい魔物が多くいるらしい。前世のように海水浴場とかはないらしい。……前世でもサメが海水浴場にあらわれたとかで大変な騒ぎになったりしてたもんな。今世ではもっと危険な魔物が存在しているという事だもんな。それならば、海水浴が出来ないのは当然だ。それで今世では泳げない人もそれなりにいるらしい。
例えば商業都市と呼ばれる大きな街。都市とつくような大きな街には俺はもちろんいったことがない。この村とは比べられないぐらいの人が暮らしているらしい。それでいて、人の行き来が激しくて、商人たちが至るところにいるそうだ。最新商品などはそういう大きな都市にいけば手に入ったりするらしい。
そういう話を聞いただけでも俺は目を輝かせてしまった。
そしてその後に魔法の話をしてくれた。




