赤ちゃん生活、うさ耳くん ①
獣人なんていうものがいるので、異世界だろうことは分かっていた。しかし、言葉が通じないというのは困る。
異世界語、現状なんとなくしか分からない。そしてご飯をもらうのが恥ずかしい。母さんが美少女すぎる。こんな若さで、二人も子供産んでる事実に正直何とも言えない気持ちになる。なんか、俺を見てにこにこしているのを見ると、愛されている、っていうのがわかって何だか安心する。
そして赤ん坊だからか、眠くなってくる。
うとうとする俺を優しい声が眠りへといざなうのだ。
目を覚ましても現実は変わらない。俺はやはり、うさ耳の獣人に転生してしまったようだ。……兎の獣人って漫画とかだと女の子ばかりな気がするけど、まさか俺は女だったりするのだろうか。転生は転生でもTS転生とかだと俺は勘弁だぞ。そう思いながらも現状、自分の性別を確認する方法が良くわからない。というか、言葉も分からないから困る。
とりあえず俺は寝て起きて、の暮らしをずっと続けていた。
そしてそうしているうちに言葉はいまだによくわからないものの、俺の名前がユーリということは分かった。……男なのか、女なのか、微妙な名前だなと思った。
あと、父親らしき存在は凄いイケボだった。なんていい声だと。声フェチェとかならころりといきそうな声だと思った。あと、顔は良くわからない。というか、まだ目がそこまでよく見えない。ただ、耳と尻尾ではなかった。俺の耳と尻尾、どうせなら犬とか狼の方が良かった。兎か、兎……と思ってしまう。
性別が男だとしても女だとしても兎の獣人になるとか、正直微妙な気分になる。
男としては(体の性別が現状分からないが)、もっとかっこいい獣人転生の方が良かったと思う。
そういえば、起きている間、よく兄らしき存在はくる。名前はコーガというみたいだ。かっこいい名前だ。よく俺の顔を覗き込んでいる。そしてキラキラした目を向けている。父親は何を生業としている人かは正直全然分からない。そもそもまだこの家から出た事もないからどんな場所に住んでいるかもわからない。ただ、この家、そんなに豪華とかではないし、よくある貴族への転生とかそういうのではないと思う。
母さんはよく植物を食べているっぽいのは目撃する。やっぱり兎だから肉より植物を食べたい感じなのだろうか。前世で俺肉大好きだったんだが、肉苦手とかに今世ではなってたりするんだろうか。
やることもないから、ひたすら周りのことを考えている気がする。
異世界転生ものなら、赤ん坊の頃から魔力を感じれる! とかよくある気がするけれど、正直俺は眠くて仕方ないし、魔力を探そうと力んだら致してしまったりとか、疲れて寝てしまったりとかしてるからああいう無双系は難しいだろう。
獣人って、勝手に魔法とか使うの苦手なイメージあるけど、この世界ではどうなのだろうか。そもそも獣人とかがいたとしても、魔法がある世界かどうかも現状分からない。獣人だと身体能力とか高いとかなのだろうか。
でも、兎、兎って……あんまり強くなさそうなイメージなんだけど、どうなんだろう。
どうせ異世界転生したなら強くなりたいんだけど。兎の獣人で強くなる方法ってなんだろう。この世界の兎滅茶苦茶強かったりとかしないかな。……母さんみている限り全然そんな感じないな。
それと言葉をきちんとわかるようにならなければ。なんていっているかこのまま分からないままとかだったら確実におかしい。言葉をわかるようになって、色々情報収集もしたいし。
異世界ものみたいに言語すぐわかるのってよく考えればある意味チートだよな。俺にはさっぱりわかんない。下手に日本語の記憶あるからこそ難しい気がする。しかし、俺は頑張る。
幼い頃から才覚をあらわして転生として――とかも凄く憧れるけれど、言語さえも分からないこのままじゃ無理そうだな。地道にこの世界で生きていくためのこととか色々学ぼう。
兄さんがよく話しかけてくれるから、少しずつだけどなんていいたいかわかっていけそうだし。兄さんが俺を見下ろしてニコニコと言っている言葉は、可愛い? かな? ……マジで、女じゃないといいな、俺。
可愛い、うん、赤ちゃんになら男でも女でもいう言葉だよな。大丈夫だよな、俺ちゃんと今世でも男だよな? 凄い不安になってきた。前世で男だったから今世でも男がいいです。お願いします、いるかどうかも分からない神様。
と、願っていた俺はしばらく後に無事、自分が男として生まれたことを知って安堵するのであった。