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うさ耳くんの、修行 1

 うさ耳防具が壊れてから、二月ほど経った。新しいうさ耳防具は届いているけれども、ひとまずはうさ耳防具を装備せずに行動に繰り出している。破損したらもったいない。それにお金もない。それならば、お金がなくても出来る事をしようという結論に至ったためだ。

 耳を覆っての生活をしていると、大分耳に頼らなくても動けるようにはなったが、まだまだだ。もし、魔力が使えなかった時の場合も考えて、ノアレに勝利して、ノアレをお嫁さんにもらえるようにしなければ。

 家族や村人達には変な子供扱いされているけれど、この地道な努力がいずれ実るはずと俺は信じている。

 いつか、耳が聞こえなくても動けるレベルになりたい。そういうのに憧れる。あとは、目を瞑っていても問題がないみたいなのとか。この異世界はどういう敵がいるかもわからないし、耳や目をふさぐ相手はいるかもしれない。五感を塞ぐというのは有効な手段なのだ。うん、俺も勝てそうにない敵とかいたら五感をつぶすようにしようと考えた。

 正直、最強の魔法で敵を殲滅! とか、圧倒的な剣技で敵を両断! とかそういうのにもすごく憧れる。異世界に転生した身としてみればそういうのやってみたいとうずうずする。でも、実際問題そういう事が出来るかと憧れは別の話だ。俺は死にたくないし、ノアレと結婚したいのだ。だからこそ頑張る。

 そのための修行としてタオルで耳を覆ったままの剣の鍛錬。とはいってもまだ実剣は握らせてもらえないから棒を振り回しているだけだけどさ。それでもなんとか、耳が聞こえにくくても動けるようになった。兄さんに模擬戦もしてもらっている。いまだに勝てたことはない。あと耳を守りながら戦うすべを学んでいる。うさ耳防具がうまくいけば、気にしないでいけるかもしれないけれど一番は弱点に攻撃が当たらないようにすることだ。耳に当たらないようにする。もしくは、耳への攻撃をする暇がないぐらいに即急に戦いに勝利する。それが第一だろうか。そのために俺が求めているのは素早さである。

 幸いな事にうさぎの獣人というのはすばしっこさはある。これを極めれば少しは戦いやすくなると思う。まぁ、力はほかの獣人に比べてないんだけど。それでもうさぎの獣人なりの戦い方があるはずだと俺は期待している。というか、それをどうにか生み出さないとノアレと結婚なんてできないのだ。

 一生懸命に体を動かして、傷も作りながら俺は過ごしている。

 毎日毎日、家の手伝いをしながらも空いた時間はすべて強くなるための修行に費やしている俺を家族は心配そうだ。

 ブラコン気味の兄さんは、「そんなに無理をしなくていいのに」といつも俺に言ってくる。

 まぁ、確かにこの村で一生を終えるとかならそんなに強くなる必要はないだろう。狩りが満足に出来るレベルの強さがあれば問題ない。加えてうさぎの獣人の俺にはそんな戦闘力は求められていない。裏方仕事をしているだけでも満足されるだろう……。ほかのうさぎの獣人は雄であろうとも、戦闘仕事をしているものは早々いない。俺も転生者でなければおとなしく裏方仕事をしていただろう。

 だけれども俺はうさぎの獣人の可能性を信じたい。というか、可能性を切り開きたいっていうのが正しいかもしれない。

 ノアレをお嫁さんにしたいっていうのが一番の理由だから、理由が不純かもしれないけれどその思いは真実なのだ。

 だから傷だらけになりながらも、自分が戦える道を模索する。

 耳をふさぎながらの移動をしているうちに周りの気配がなんとなく感じられるようになってきている。それも一種の成果だ。獣人という種族は元々人間よりも五感が発達している。だからこそ気配を感じ取る能力も強いのではないかと思う。

 ほんの少しずつだけど進歩はしている。

 魔力を持っているノアレはもっともっと進歩しているかもしれないけれど、だけど、俺はノアレを追い越したい。魔力がなかったとしても、魔力があったとしてもノアレの傍にいられるように。

 ある程度、耳を塞ぐことになれた後は、目を塞いでの行動も試してみる事にした。

 また、家族や村人たちには何をやっているんだと呆れられたし、危ない事をしないでほしいと言われたけど――でも、何かしらの結果になるのだと信じて。

 これで耳や目がふさがれても行動が出来るようになれば、大成功なのだ。

 目を瞑っての行動だと、耳を研ぎ澄ませて、あとは鼻でにおいを感じて、それを基準に動いた。もちろん最初はぶつかったり、兄さんの腕をつかみながらの移動になったりと要介護みたいな状態だった。でも、目を塞いで生活をしてくると、それなりになれてくる。

 こうして少しずつ、五感を塞いでも慣れて動けるようになっていく感覚が嬉しかった。

 ……何人かに頭おかしいとか言われたからへこんだけど!! 皆に勝算されるほどの結果は出ているわけではないけれども少しずつでも進歩している。それだけでも俺にとっては満足だった。もちろん、もっと、もっと結果を出したいって思いは強いけれど、達成感は強かったのだ。





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