うさ耳くんと、うさ耳防具 2
うさ耳防具を装備して、行動をし続ける。
だけれどもやっぱり耳が塞がれている状況というのは、違和感が大きすぎて大変だ。聞き取りづらくて、兄さんに呼ばれても中々、返事が出来ないほどだった。
「ユーリ、それ不便だろう?」
「……うん」
「ユーリは戦闘に向かないうさぎの獣人なんだから無理せずに後方支援をすべきではないか?」
「……俺は、強くなりたい」
後方支援をすべきではないか、と兄さんが進めてくるのは俺に危険な真似をしてほしくないと心配してくれているからだとは分かっている。
それに兄さんからしてみれば、うさぎの獣人が強くなりたいなんて夢物語でしかないのかもしれない。確かに現実的に考えて兎の獣人が戦いの中で生きるのは難しい。それだけ戦いにくいのだ。俺がそのうち諦めるだろうと、母さんも父さんも、兄さんも思っている。父さんが鍛冶師に頼んでくれていたのも、多分そこまでして上手くいかなければ諦めるだろうと思っているからだと思う。
ただ……ノアレだけは、そんな風には思ってない。俺が強くなるの楽しみにしているって手紙が来てた。俺は自分が強くなれる事を信じている。ノアレも……本心は分からないけど、楽しみにしているって言ってくれている。なら、頑張るしかない。
「――はぁはぁ」
うさ耳防具を身に着けて体を動かすと、いつも以上につかれる。俺だってまだ子供だし、少しずつ体力がついてきているとはいえ、体力がそこまであるわけではない。もっと走ったりして体力を身につけたい。……それにしても耳が動かしにくくて聴覚に問題があるのは問題だ。うーん、将来的に魔力が手に入らなかった場合を考えて、聴力に頼らずに周りを感じられるようになる練習をすべきではないか。
うん、そうだな。だからこそ、目を鍛えて、気配を感じる力を身につけよう。どうやって身につけられるか分からないけれど、聴力に頼らない動きをするのが大事。いっその事、体を動かさない時からうさ耳防具を身に着けて、耳が不便な状況を当たり前にして動くのがいいかもしれない。
それにしても前世の俺はここまで努力をしようなんて考えいなかったわけだけど、今の俺はノアレっていう好きな女の子に出会って、前世にはない魔法がある世界に来て、やりたいことが沢山あって、努力をしたいと願ってならない。
「よし……早速耳に頼らない生活をしよう」
耳に頼らない生活をする。そう決めた俺はそれから日常生活でもずっとうさ耳防具をつけている事にした。
そうした生活をするにあたって家族になんとも言えない顔をしていた。
「ユーリの可愛い耳が見えないじゃない」
「ユーリ……そこまで本気なのか?」
特に母さんと兄さんが嘆いていた。俺のうさ耳を見るのが好きだったらしい。そんな不満顔されても、俺は強くなりたいから聴力に頼らないようにうさ耳防具は外さない! ちょっと母さんたちの顔に気持ちは揺らいだけれど……。
ずっとうさ耳防具を身に着けている俺は周りからしてみれば、変な子供のようだけど……苛められたりすることはなかったから良かった。まぁ、たまたま同年代が居なかったから苛めとかなくてよかった。同年代がいて、こんな変な事している子供いたら浮いた気がする。丁度、兄さんぐらいの年代の子供が多いのだよな。
この村の人たちが優しい人達で良かった。流石にそんな状況になったら凹む気がする。
それにしても耳をふさいでの生活って、うさぎの獣人だからこそそこそこふさいでいても聞こえるけれど人間だったらこの段階で何も聞こえないだろう。そうなると、うさぎの獣人で良かったと思った。まぁ、うさぎの獣人ではなかったらこんなうさ耳防具問題とか考えなくてよかったわけだけど。まぁ、考えても仕方がない。
そうやってずっとうさ耳防具を身に着けて生活していれば、流石にうさ耳防具が再起不能なまでに壊れてしまった。新しいものを頼んでくれるらしいけれど、作られるまでには時間がかかる。父さんにもあんまり壊すのなら頼めないといわれた。
いっそのこと、耳をふさいで動くだけの練習を進めようか。タオルとか簡単なもので耳をおおって生活をする。それがいいかもしれない。俺は現在子供で経済力も何もかもないのだから、下手に消費するわけにはいかない。大体、俺の家はそんなに裕福なわけでもないし。
そういうわけでひとまず、タオルとかを使って耳を覆って生活する事にした。うさ耳防具は大事な時以外使わないことにして、聴力に頼らない生活をすることを第一にすることを目標に俺はしたのだった。
そんな風に生活していれば、大分耳が聞こえ辛い時も動けるようになってきた。