プロローグ:転生したら、うさ耳だった
俺はその日、高校からの帰り道を歩いていた。
ちょうど、そう、高校一年生の一学期が終わり、これから夏休みが始まるんだと心を躍らせていた時だった。
高校入学してからの数か月、正直苦痛だった。というのも、中学の同級生が居ないような進学校に進んでみたはいいものの、クラスメイト達になじめなかったのだ。そのため、俺は絶賛ぼっち生活中というやつであった。
そんな俺は、夏休みは思いっきりゲームをして、漫画を読んで、そして中学のクラスメイトたちと遊ぼうと考えていた。高校生活で現状ぼっち生活なのは辛いが、高校だけが全てではないし、友人たちもいるので特に悲観はしていない。
夏休みが楽しみで、軽い足取りで俺は歩いていた。
丁度、横断歩道が青に変わったのを確認して歩きはじめる。その時、周りが騒がしくなった。なんだと、右を見たら横断歩道は青なのに、こちらに突っ込んでこようとしているトラックがあった。運転手は……寝ていた。
そして、気が付いたら俺は強い衝撃と共に意識を失っていた。
*
温かい何かに包まれている感覚がする。
手足は動かない。俺は轢かれたのではないのだろうか。トラックに轢かれて、体が動かなくなった? 半身不随とかになってたらどうしようか。高校生でそれか。でも、相手の過失での事故だから生活はどうにかなるか? しかし、これからの生活がどうなるのだろうか。生きているだけでも儲けものだとそんな風に考えるべきなのだろうか。
しかし、ここは何処なのだろうか。目を開けても真っ暗だ。どこかに閉じ込められている? 誘拐? 事故にあった後に誘拐されるとか、どれだけ運が悪いのだろうか、俺は。
そんな風に考えていたら、急に俺は何かに引っ張られる感覚になった。
え、なななに、これっと俺が戸惑っているうちに、俺は引っ張られるがままに明るい場所へと出た。
それと同時に何かを叫ぼうとした俺の口から、
「おぎゃああああ」
という声が響いたのだった。
その後、女性に抱きかかえられたり、話しかけられたりする中で、あ、俺転生したんだと気付いた。
いや、まぁトラックにひかれたわけだから無事ではすまないと思っていたけど、まさか転生するとは。今まで転生ものの本とかよく読んでいたから特に抵抗はない。だが……気になることがあった。
それは母親らしき凄く若い美少女が……兎の耳を持っていること。そしてその後、飛び込んできた兄だと思われる少年は犬……? いや、狼か? どちらか分からないが、そういう耳。で……、兎耳の母親と犬か狼かの耳の兄を持つ俺は……?
母親に抱かれながら、視線を動かす。まだ視力が赤ん坊だからかはっきりしていない。けれど、鏡に映った俺の上部に伸びている耳は……確かに兎だった。