前の世界と新たな能力
葵が作ったお昼を食べて森の探索を続ける。
「そういえば、蓮華は帰りたいと思ってないのか?」
「そうね。私もこのままでいいかなと思ってはいるわ。」
蓮華も帰りたいとはあまり思ってないらしい。
「蓮華も?なんで?」
「私向こうでは生徒会長だとか弓道部の部長とかリーダー的な役職につくことが多くなっていたの。それでいつもは頼られて、最初頼られることに喜びを感じていたから良かったけど、そのうち疲れちゃって嫌になってたのよ。だから、あまり帰りたいとは思ってないわ。」
おれは頼られたことがあまり無いから分からないけど頼られるのって疲れるのか。
「私からは以上ね。夜空はどうなの?」
「おれは、分からない。」
「分からないってどういう事よ。」
「それは、帰りたい自分と帰りたくない自分がいるってこと。」
「なんで?夜空君は今の環境は不満?」
「いや、そういう訳じゃないんだ。前の世界じゃおれは楽しくやってたしなんにも不満はないんだよ。蓮華や葵みたいにうんざりしてた訳じゃない。だから迷ってるんだと思う。二人に聞いといてなんだけど中途半端でごめん。」
「別に謝ることじゃないわ。その時の生活をどう思うかなんて人それぞれだもの。気にすることないわ。」
「そうだよ。私がうんざりしたのは自分の情けなさだから。大丈夫だよ。」
「そう言って貰えると助かる。」
いったいおれは、どうしたいのだろうか。
このまま蓮華達と一緒に暮らすのか。
それとも帰る方法を探して元の世界に帰るのか。
今はまだ、分からなかった。
森での探索が終わって成果は感じ。
モンスター。
ゴブリン×10
レッドウルフ×5
マンティス×6
ゴリラ×12(名前不明)
食料
イノシシ×3
鹿×4
兎×2
戦闘も問題無かったし食糧も手に入って順調だった。
「それにしても夜空、戦闘慣れしすぎじゃない?」
というのも、さっきからモンスターの攻撃は1度も受けていない。
「あー、それは元の世界で剣道の相手させられてたからだよ。」
「それでも、凄いね。後ろからの奇襲も楽に躱してたし。」
「それも、剣道。」
「やってたのって本当に剣道?」
剣道は基本一対一で行う競技だ。奇襲なんて出来ない。
「うーん。ちょっと違う。3対1でやって。相手は防具つけて竹刀持って、もう一人は薙刀、もう一人は弓とかいう、前衛と後衛が完璧の布陣だったからね。それを避けてたらあれぐらい避けるなんてわけないよ。」
前にチャンバラをやっていたといったが内容はえげつない。
どれが当たっても骨にヒビが入る。
そんな地獄のような地獄を味わったのだから奇襲の五回や十回避けるのは簡単だ。
「そ、そう。夜空も大変ね。」
「夜空君。それでよく生きてたね。」
「まぁ、一回ミスって頭に竹刀と薙刀受けて十針縫う怪我したけどな。まぁ、大丈夫だ。」
「「それ、大丈夫って言わない。」」
価値観の違いからか二人からは賛同は得られなかった。
そうこう話しているうちに街へ戻ってきた。
「あ、こんにちは。早速クエストをこなしていたんですね。」
「まぁ、自分の食い扶持ぐらいは稼がないといけないからな。」
「その調子で頑張ってください。」
受付嬢さんに倒したモンスター達を引き渡した。
ちなみに、この世界に当然、無限収納というものはない。
しかし、それと似たアイテムボックスなるものがある。
アイテムボックス
性能は《無限収納》の下位互換。
容量に制限があり。それは使用者の魔力に依存するという。
能力がバレると色々めんどくさいから皮袋をアイテムボックスの代わりとしてそこから、モンスター達を出した振りをした。
「こんなに沢山狩ったんですか?凄い量ですね。」
ま、驚くのも無理ないかな。
モンスターだけで32体はいるからな。
モンスターからは武器防具などで使う素材が取れるが今は必要ないからほとんど買い取ってもらう。
モンスター32体全部で
金額12枚と銀貨3枚だった。
これはかなり、稼いだ方らしい。
まぁ、当たり前か。
≪無限収納≫がない普通の冒険者はアイテムボックスか担いでモンスターをギルドまで運ぶ必要がある。
当然運べる量も少ない。
おれ達は≪無限収納≫があるため何体でも運ぶことが出来る。
初クエストをこなしたおれ達は一旦宿に戻ることにした。
「さて、今回初戦闘をしたわけだけども、なにか問題とか改善点とかあるか?」
「今は問題ないわ。でも、これから出来るだけ葵にも参加してほしいの。」
「えっ。で、でも私戦えない。」
「大丈夫よ。夜空っていう盾がいるものただ、葵は攻撃出来るタイミングで攻撃すればいいのよ。」
ちょっと蓮華さん?人を盾呼ばわりはよくないんじゃないかな。
しかし、蓮華のいうことも一理ある。
これからモンスターが強くなっていくのだとしたら自衛手段は必要不可欠になってくる。
それでも、不安は残る。
いくらおれが守るとしても限度がある。
それと、中には人形または、完全に人のようなモンスターがいる。それを葵が倒せるかということだ。
相手はモンスターだが、そんなのはおれの持論で葵がどう思っているかは分からない。
ん?待てよ。
「や、葵は戦う必要はない。」
「どういうこと?自衛手段はあった方がいいでしょ?」
「確かに自衛手段は身につけて貰うがあくまで緊急回避程度だ。」
「それじゃあ、危険な目にあった時に葵が真っ先に死んじゃうわよ。」
「そうならないように、おれが強くなればいい。葵もそうだが蓮華もだ。二人に危険が迫ったらおれが駆けつけて守る。そうすれば葵が戦うことも少なくなるし二人とも守れる。」
実際それが出来たら苦労しない。
だがそれは、一般論である。
一般論の範疇にない、異能力がおれ達にはある。
二人にはまだ、言ってないが今おれには3つの能力が解放されている。
《神眼》、《無限収納》そして、《安全地帯》
《安全地帯》
対象を誰も認識出来なくなる。ただし、発動中は被ダメが倍加。
この能力を二人に話すと使用を禁止される可能性があるから言っていないが完全に誰かを守るための能力だ。
今になって気づいたがおれの能力の殆どがおれの思いによって発現している。
《神眼》は今の状況が知りたかった時に発現。
《無限収納》は物が沢山運べたら楽だなと思った時。
そして、
《安全地帯》は葵達を危険から守りたいと思った時に発現。
どう考えてもご都合主義の発現の仕方だ。
便利である反面怖くもある。
あまり、強く望まない方がいいな。
「夜空がそこまでいうのなら、それでもいいでしょうけど、でも、葵にも何らかの形で参加した方がいいんじゃないかしら。」
あまり、前衛に出ないで弓と被らないものなんて一つしかない。
魔法使いだ。
ここで、《神眼》を使って葵を詳しく見てみると。
葵は魔法適性が高いことがわかった。
つまりは、魔法使い向けということこだ。
「なら、魔法使いがいい。葵はおれ達より魔法適性が高い。」
「私が魔法使い?無理だよ〜。私記憶とか苦手だし。」
「なら、魔導書なんかいいんじゃないかしら。」
「「魔導書?」」
「そ、魔導書は呪文を暗記しながら覚えるものよ。早い話、教科書ね。」
「それなら大丈夫かも。」
そんなのがこの世界にはあるのかやっぱりファンタジーだな。
ということで本屋。
本屋といっても魔導書専門の本屋だ。
「いらっしゃい。」
店主は蓮華よりもスタイルがいい女店主だった。
出るとこは出てるのに引っ込む所は引っ込んでる。
服装も胸を強調した服装をしていて前がガッツリ開いている。
「コホン。夜空?葵にはなにがオススメかしら?」
蓮華さん?なんでそんなに笑いながら黒いなにかを出しているんですかね。
別に女店主の胸に見とれてた訳じゃないよ?
あと、非常に怖いので辞めて頂きたい。
葵も葵で自分の胸と比べて落胆している。
大丈夫。あんなおっぱいお化けと比べちゃ駄目だ。
そろそろ蓮華が怖いので視線を逸らして葵に合う魔法を探す。
この世界の魔法概念、
つまり、属性は5+2属性となる。
火魔法。水魔法。土魔法。風魔法。雷魔法。
と
回復魔法。黒魔法。
一応無属性魔法もあるらしいがあくまで噂だから今回数には入れてない。
主に使われている魔法だ。
名前も分かりやすく覚えやすいという。
ただ、黒魔法はほぼ無属性魔法に近く扱える者が少ないという。
そもそも、魔法を使うには適性が必要らしい。
その適性も人によって出来るもの出来なものがハッキリ分かれる。
葵の場合そのすべてに適性があった。
おれと蓮華が魔法適性10だとすると葵は魔法適性100ある状態だ。
どう考えても魔法使いになれと言わんばかりのステータスである。
「葵はどの魔法が使いたい?」
全ての魔法が使えるんだったら葵が使いたいものを使うべきだろう。
「私は回復魔法がいいかな。攻撃魔法はまだ、ちょっと.....。」
葵としては誤射が怖いのだろう。
まぁ、回復魔法が使えないという訳ではないから別にいいだろう。
葵に魔導書を渡してもう一度ステータスを見てみた。
琴葉葵
Lv5
スキル[料理]、[育児]、[慈悲]、[癒し]
能力《万能料理》《魔法制作》《???》
なんと、葵に魔導書を渡したら新しい能力が開眼していた。
しかも、《魔法制作》だ。
これは、無属性魔法作らなきゃな。(使命感)
タイトル変更しました。
異世界攻略?異能力で余裕です!→異世界?無双で決まりだな!
に変更しました。
今回はちょっと長め?です。
ただ、千字多くしただけですが。