11/25
夜/バイト開始
わたしは仕事着に着替え、部屋に戻った。
この駅は独特な制服だ。黒づくめと言っても過言じゃない。
わたしの仕事着は女性用というだけで、男性用とあまりデザインは変わらない。
「それじゃ、今晩も行ってきます!」
「ああ、頑張ってな」
「ケガなどしないようにね」
「まっ、ほどほどにな」
三人を駅員室に残し、わたしは一人、ホームに行った。
わたしの『バイト』を開始する為に。
制服は独特のデザインのスーツみたいなもの。
この地下鉄は少し寒いので、生地は厚く出来ている。
わたしは帽子を被り直し、地下鉄の中を歩き出した。
電車を動かすのは、彼等の役目。
地下鉄の運営をするのも、彼等の役目。
わたしの役目とは、『案内』だ。
この地下鉄には、乗れる資格のあるモノと、乗ってはいけないモノが集まる。
最近、霧が濃くなっているせいで、『迷子』が多い。
行き先が分からなくなる迷子じゃない。
この地下鉄の意味が分からず、迷っているモノを『迷子』と言う。
つまり、乗る資格のないモノのことを、『迷子』と言うのだ。