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不遇な主人公でもなんとかなる  作者: stray7
1章 出会い
7/20

辛い過去、そして出会い

「私って昔から、ううん、生まれた時からこんな感じなんだよね」

「こんな感じってどんな感じだよ」


 つい始めからツッコんでしまった。

 わかりづらいんだから仕方がない。


「あ、ごめん。うーんと、『完璧』な感じってことかな?」


「ああ、なるほど」


「はぁぁ……。やっぱりそう見える?」

 だって事実だしな。



「……うん、話を戻すね」



「そう、私は『完璧』だった。何もかもがね」


「超人的な記憶力、卓越した運動神経、当たりすぎる直感……」



 話の雲行きが怪しくなってきたな……。




「知ってる?人間――いや、動物はね、自分と少しだけ違う生き物をとても嫌うの」


「有名な話だからな。一応は」

「そう、それなら大体わかるよね」



 ……わかってしまう。



「私の周りには人が寄ってこなくなった。それどころか、奇妙な目で見られるようになった」


「辛かった。私もみんなと同じなのに、ってずっと思ってた」


 苦しみがじわじわと伝わってくる。


「それはやっぱり、学校でも同じだった」


「勉強の時間はもちろん、体育、休み時間でも、私はみんなと何かが違ったの」



「……なじめなかった。何が『普通』なんだ、ってずっと考えていた」



 ……最初のころの明るい口調はもう、なかった。



「……私はいじめのターゲットになった。真正面から立ち向かったら負けると知っているから、陰湿に」



『いじめ』。その辛さは、俺には到底理解できるものではないだろう。



「何度も何度も、辛い目にあった。けど、大人たちに話してもどうもしてくれなかった」


「どうして?それを助けるのが大人の役目じゃないのか?」


「……『あなたなら自分で何とかできるでしょう』って」


 ……ひどい話だ。苦しんでいるのなら、それが「誰か」なんて関係ないはずなのに。


「それで、どうしたんだ?」


「……小学校は頑張って通った。けれど、中学校は――」

「言わなくていいよ」


 俺にとっても、才華にとっても辛いだろう。


「……うん、ありがとう」



 ……嫌な話だ。とにかく嫌な。



「それでね、高校は0からやり直そう、っていうことでここに引っ越したの」


「そして、この高校に入った……と」


「うん。そしてあなたに出会った」




 ――そのときの才華の表情は、



「どうかした?」

「いや、なんでもない」



 ――どこか嬉しそうだった。


苦しんでいる人の気持ちを真に理解できる人はいるのでしょうか。

そういう人が増えない限り、苦しみは消えないのかもしれません。

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