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Vectoria  作者: T.M.H.F.B
6/10

■六話

    side:月見里 司



モノに送り出された僕は、なんかよくわからん空間に浮いていた。


いた(・・)んじゃなくて、浮いていた(・・・・・)、ね。なんかここ地面ないっぽい。


そしてどうよくわからんのかと言うと、なんか真っ暗です。はい。


辺りを見回してみても光の一粒も見えないし、見下ろしてみても自分の体すら見えない。


そして得も言えぬ無重力感。

浮遊感とはまた何か違うんだよね。


そして、僕がそんなよくわからん空間でどうなっているかと言うと、




















「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」







もの凄く振り回されていた。




それはもう、もの凄く。


いや、振り回されるという表現だと語弊があるかもしれない。

僕は別に何かに引っ掴まれて、引っ張りまわされているというわけではないのだから。


強いて言うなら、ものすごくでかい洗濯機で回されているような、はたまたジェットコースターに括り付けられて(・・・・・・・)宙吊りの状態で滑走されているかのような……



ってんな悠長なこと考えてる場合じゃねーーーーーー!!



てか酔う!いやもう酔ってる!吐く!本気で吐く!僕の胃の中がポロロッカ起こす!!


モノのヤロー取り合うってこうゆうことか!それぞれの勢力が魔力で『()』を引っ張り合ってんのかよ!?


てか比喩とかじゃなくてそんなリアルな取り合い!?

僕が好きに選んでいいんじゃないの!?

それともこの状況で選べと!!?



無茶を言うなああああああああああああああああ!!



……ああ、もう、マジでリバースしそう。


なんかよくわからん空間だし、いっそこのまま吐いてしまおうか。


絶えることのない三半規管の悲鳴に、僕は恥やら外聞やらその他もろもろを投げ捨ててしまおうかと、危険なことを考える。



…………もう……誰でもいいから助けてくれ……



泣きたい気持ちで意識を飛ばしかけた瞬間、突然左手首を何かにガシッと掴まれた。



そして、掴まれた方向へ一気に引っ張られる。

















………………………………ハッ!!



すいません、なんかガチで意識飛んでたっぽいです。


あ、でもなんか振り回され感止まってる。

てことはどっちかに()ばれ切ったわけか……あー、助かった……


……てゆうか、なんか足とか腰とか冷たいんだけど。

何これ、もしかしなくても水に浸かってる?

上半身はあんまり水に触れてないっぽいけど、なんか別の意味で冷たい。

なんか金属の上にでも打ち上げられたのか?


てゆうか……



「……(いた)っ」



左手首がめっちゃ痛いです!



握力どんだけあんだよって力で、未だ握り締められ続けている僕の手首。


やめて!人体は壊れ物です!乱暴に扱わないでください!

てかマジで放して!痣できる!なんかホラーな痣できる!!

朝起きて発見すると思わずゾッとするような、そんなホラーな痣ができる!



と、半ば慌てたように手首が放された。



…………おっ?



いつの間にか閉じていた瞼を、そっと開く。

多分意識が飛んだ時にでも閉じたんだろう。

召喚されるなり他人に白目向いた顔とか見られなくてよかった。

そんなことになれば、それこそ目も当てられない状態になっただろう。

白目だけに。



…………



……さて、それはそうと、






目の前にはイケメンがいた。






それもモデルも真っ青の超絶なイケメン。


肩ぐらいの長さの金髪に、碧色の瞳。

顔立ちは恐ろしく整っており、街を歩けば十人中十人共振り返るだろう。

いやもうむしろ十人どころか三十人は振り返るかもしれない。

計算が合わなかろうが知ったことか。比喩だよ、比喩。


とにかく、「顔面差別反対!」と叫びたくなる程のイケメンがそこにいたわけだ。

……いや、僕は叫ばないけどね?


ただ、僕の視界からは肩から胸程までしか見えないが、勇者よろしく鎧っぽい物を纏ってるっぽい。


金属っぽい冷たさはこの鎧のせいか。

金属の上に薄着で乗っかってたら冷たいのは当たり前だよね。



そう、乗っかっている。





乗っかっている。






………………







!?







「!!」


事実に気付いて、慌ててイケメンの上から飛び退く。



何、僕このイケメン君の上で寝てたの!?(正確には気を失ってたんだけど)


男と密着するとかマジ勘弁して!僕にソッチの趣味はないから!


そうゆうことは森の妖精さんだけで充分だと思う!


あんかけ炒飯でも食ってろ!!



パニックで思考回路がおかしくなりかけていると、いきなり平衡感覚が狂い、麻痺していた吐き気が込み上げてきた。



皆さんもご存知と思うが、回転からいきなり止まると、まだ三半規管内のリンパ液が回転しているため、脳は体が回転していると勘違いする。

そのため、回転から止まったばかりでは脳と体にズレが発生するため、普通に動くことができないのである。


つまり何が言いたいのかというと、あれだけ重力とか人間の限界とか無視して振り回されまくった僕が、いきなりガ●ダムのごとく大地に立てるかと言うと、そんなことは到底無理なわけで。



もう無理!といわんばかりに全身から力が抜ける。


誰かが小さく悲鳴を上げたが、それすらも遠く聴こえた。


このまま倒れたら痛いだろうとか、無事な部分まで濡れるとか、そんなん考えられる状況じゃない。




が、唐突に僕の水面ダイブは阻止された。




誰かの腕によって支えられていることに気付き、目が回って焦点の合わない目を凝らす。


すると、イケメン君が強張った表情で僕を見下ろしていた。


まあ、ようやく()び出せた『神』がいきなりぶっ倒れたらびっくりするよねー。


……あー、なんとか吐かずには済みそうかな。まだ気持ち悪いことには変わりないけど。



イケメン君は固い表情のまま僕から視線を動かすと、その視線を肩越しに後方へ向けた。









「担架を」











最近じゃ三半規管じゃなくて半規管って呼ぶんだそーね。

学校でそう習いました。


しかし習った時期はともかく、私の心は三半規管世代だと思っているので、三半規管表記で( ̄ー ̄)+



まあそれはともかく、やって参りました異世界。


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