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Vectoria  作者: T.M.H.F.B
4/10

■四話




………………話を整理しよう。




モノが言うことには、奴は僕に一つ嘘をついていたらしい。


当初モノは、僕を勇者をして異世界に送ると言っていたが、本当は僕を『神』として送るらしい。

ちなみに勇者は既に別にいるとか。


いや神はあんたじゃないのか、とも思ったが、モノ曰く、モノ自身は神として特殊な立ち位置にいるらしく、一般的に認識されている神のように、何かを司ったり奉られたり崇められているわけじゃないらしい。

そもそも、モノという(名付けたのは僕だけど)神の存在すら、知る者は極一握りしかいないらしい。



それはともかく、モノは僕を『一般的に認識されている神』として送り出すとのこと。



ちなみに僕が今から行く世界は、多神論的な考えが一般的らしい。


そして僕がなるのはその世界では伝説の神らしい存在で、過去に一度だけ人間と魔族の戦争中に現れ、戦いの勝敗を意のままに操ったとされるらしい。


その際、その神が味方に付いた軍が勝利を収めていたため、今では『勝利の神』だとかなんとか言われてるらしい。


それ以来、人間と魔族間で戦争が起こる際には、軍の出撃の際には必ずその神に祈りを捧げ、劣勢に陥った際には『勝利の神』召喚の儀式が行われるらしい。

ちなみにその儀式とやらは、必ずその神が現れたとされる時間に行われるらしい。


いや、召喚やってる暇あったら策でも練れよと思うが、モノ曰く、その辺はちゃんと役割分担がされているらしい。



……正直、伝説とはいえ、神とはいえ、不確定なものにここまですがっていいものかと思う。



そして、今回の戦争はどちらが劣勢というわけでもなく、どっち付かずのジリ貧な戦況がダラダラと続いているらしい。


そこで、もうとっとと決着を付けたい、と、人間側と魔族側で同時に召喚が行われるらしい(半ばヤケクソ気味で)。



そして、言い伝えられているその神の唯一の特徴が、黒髪だということらしい。








結論。




















「面倒臭ええええええええええええええええええええええええ!!!」





何これいじめ!?面倒臭いことこの上ねぇよ!!


勇者やるってだけでも厄介ごとだなぁと思ってたのに!承諾したけど!


あんたねぇ!人間と神やるんじゃ差があり過ぎるんじゃないの!?

チート能力貰ったとはいえ割りに合わんわ!

つーか性に合わんわ!!


何、僕このままじゃ行った先で神の如く崇められちゃうわけ!?

いや、実際神らしいけどね!


そんで全くの無関係の戦争に駆り出されるわけ!?


無理無理無理!ありえん!無理!!


先生!今ここで I☆JI☆ME☆ が行われています!

……え、何?知らない!?いじめは存在しませんでした!?

えぇい!教師はいつだって保身に走りやがるよコノヤローーー!!

いじめが発覚すると自分に責任が降りかかるから、常に見て見ぬフリだコノヤローーー!!


「……あったの?いじめ。まあそれはともかく、そうなるよね、普通は。だから私はさっき言ったんだ。


『君の好きにしなさい』


って」


……え、なんでそこでそれに繋がるわけ?


「人間側と魔族側に同時に召喚されるから―――もとい、人間側と魔族側で君を取り合うから、好きな方を選びなさい。んで、好きなように振舞いなさい。

さっきも言ったけど、


いっそ魔族側に付いてもよし。


普通に魔王倒してもよし。


どっち付かずで傍観者気取るもよし。


両者共滅ぼしてもよし。


甘ったれた住民達が伝説の神に頼り切って私利私欲のことだけ考えるようなら、わざわざそんな奴らの欲求に答える必要はない。君は私があげた能力で、好きに生きなさい」


……非っっ常~~~~~~~~に有難いお言葉ではありますが、それは神としてどうなんでしょうか。

責任とか、あるんじゃないでしょうか。


実際どうなのよ。


てゆうか……


「言わずもがな、か……」


「そ。自由に責任は付き物さね。むしろ、だからこそ自由にさせるなんてハイリスクを負える。


君は自由に生きなさい。


それが世界にどんな影響を与えるのか、ハイリスクに対するリターンはそれだ。君は、結局は君が影響を与えた世界で生きなきゃならないからね。君にとって自由の責任はそこになる」


そこまで言うと、モノはポンと僕の両肩に黒一色の手を乗せた。


「……ま、とは言えそんな気に負いなさんな。最初っから全部理解するのも、全部覚悟するのも無理なんだからさ。最初はひたすら必死に生きてなさい」


そう言ってにっこりと微笑むモノ。顔はないけど。


そして僕はというと……


「ん、そっか……わかった」


「別に辞退しても構わないんだよ?」


「いや、行くよ。一回請けるって言ったし。ただ……」


「ただ?」



「一発殴らせろやああああああああああああああああああああ!!!」



喰らえ!!僕の痴漢撃退用必殺右ストレートを!!


「ぐほあっ!!」


もろに僕の必殺右ストレートを喰らったモノは、綺麗な放物線を描いて吹っ飛んで行く。



まったく、厄介過ぎる依頼請けさせやがって!

朝鮮海苔切り抜いたような外見いてるくせに!

いや、自分で請けたんだけどね!請けるかどうか確認もしてくれたけどね!



ちなみに、何故痴漢撃退用なのかは訊かないでほしい。


……さて、いささか理不尽なことをしてしまったような気もするけど、この際無視だ。

依頼請けてやるんだから、これぐらいしても許されるはず。


まあ、確実に危ない依頼とはいえ、死んだのが手違いじゃなかっただけマシか。

もしそうだったら加えてアッパーと延髄蹴りとダブルラリアットかけても足りないぐらいだ。


「……おー痛て……やれやれ容赦ないねぇ。ま、こんだけ元気なら心配ないか」


ありまくりですとも。


もし容赦なかったら、チョークスリーパーと嫁の原爆固めと一本背負いとジャイアントスイングと雪崩式リバースフランケンシュタイナーと(ry


それに異世界行くのに心配ないって方がおかしいじゃないか。


「まあいいや。じゃ、さっさと送っちゃおう。詳しい状況は現地で訊きなさい」


えええええええええええまあいいやって酷くない!?


そしてなんか無責任な発言が!


「ま、大目に見てよ。なんかあったら追々連絡するから。それじゃ」


モノが吹っ飛んだ位置のまま僕に笑いかけると、






「行ってらっしゃい」






床が抜けるような浮遊感と共に、僕の視界は黒く染まった。













四話目にしてようやく異世界に旅立たせることができました。


何コレ長ぇよ!!

神でしゃばり過ぎ!!



こんな小説ですが、今後トモヨロシク……

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