遠く異国に降り立ちて
辞令を受け取った時から、色々と調べてはいた。
だが、さすがに中央ヨーロッパにまで飛ばされるとは想像していなかった。
ドイツとフランスの国境部、その盆地にあるラングマン大公国というところだ。
面積は淡路島と同じくらいで、そこに数万人が住んでいる。
名前からわかる通り、ここはラングマン大公という大公が統治している国だ。
なんで、将来には王国に昇格することをもくろんでいて、もうそろそろ国民投票でもするんじゃないかという話がある。
俺が来たのは手野グループのある会社の派遣員としてだ。
まあ、出向して1年ぐらい修行してこいという部長からのありがたいお言葉とともに、航空券と準備資金その他もろもろを渡されただけで、詳しい話はよく分かっていない。
「鵲さんですか?」
たどたどしい日本語で話しかけられる。
「はい、コーフィーさんですね」
声をかけてくれたのはブロンド巨乳で身長180センチくらいの女性だった。
「お待ちしていました。今回はラングマン開発公社からの要請を受けていただき、感謝しております」
仕事内容として聞いていたのは、要は手野グループの市場調査だ。
まだまだこのあたりでは手野グループの認知度は低い。
それも、アマーダン財閥関連の会社やテック・カバナー財閥の会社が多いということもある。
彼らと閨閥である手野グループは、そこまで販路拡大を積極的にしてこなかったという歴史的な経緯もある。
そこで俺をまずは派遣して、このあたりの調査をしたいということのようだ。
「これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、日本人はこの国では珍しいのでいろいろと聞かれるでしょうが、何とかなると思いますので」
案内され、空港の待合ターミナルから車に乗り込み、そして街中へと出ていった。