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5歳になった。いよいよ覚醒の儀だ。


5歳の誕生日会は盛大に祝われた。知り合いの貴族も呼んで大宴会。その翌日には家族だけのパーティもあった。


5歳になればだいぶ生きやすくなる。スキルさえあれば何とかなる場面も多い。というかスキルがないとできることがない、とも言えるが。


まあそんなわけで今日この日を楽しみにしていたんだ。


「ノア、あまり緊張する必要はないわ。きっと神様はあなたに沢山のスキルを与えてくれる。もしハズレのスキルばかりだったとしても、それを活かして生きる道は絶対あるわ。」

「そうだぞ、ノア。お前ならきっと素晴らしいスキルを頂戴できる。」

「うん」


この世界はもちろんスキル至上主義だ。良いスキル、強いスキル、便利なスキルを得た者が偉くて、そうじゃない者は冷遇される。弱いスキルしか貰えなかったものは「神に見放された者」として差別されることすらあるのだ。いや、それは語弊があるな。差別されるのが()()()()なのだ。生きずらい世の中だよ。まあその辺は(程度の差はあるが)前世と同じだな。


結局運か。ここでも才能を問われるとは。つくづくどうしようも無い世界だよ。酷い世界だろ、ここは!


もう教会は目の前だ。


「頑張ってね」

「うん」


両親の期待、将来への不安。並の5歳時なら耐えられないか、何も分からないまま終わるのだろう。


そう思いながら俺は目の前にある像と横で何やら唱える神官を見やる。


神官はチラリを俺を見るが、俺はただぼうっと突っ立ってるだけだ。


きっと手を重ねて祈れということなのだろう。だが俺はただ、自然体で立っていた。祈りたくなかった。何故かは分からない。でも、ただ立っている方が正解に、この時は思えたのだ。



俺たちは馬車の中に戻ってきた。馬車には沈黙が降りている。俺は未だに現実感がない感じがしていた。神が居て、スキルを与える。実際にスキルに覚醒したからか、より一層その不思議さを感じていた。


とはいえ、そろそろ現実を見なければならない。


「どうだった?」


母はなんでもないように聞いてくる。これはきっとスキルについて聞いてるのだろうなと思いつつ、俺はただ感想を述べることにした。


「不思議だった。」

「そう…」


「スキルは何を頂戴したんだ?」


父は直接的に聞いてくる。俺は正直に答えた。


「盾。盾1つだけ。」


父は眉根を寄せ、母は不安そうな顔を隠せない。それもそのはずだ。スキルが1つというのはあまり聞かない。


忌み子か…


父の脳裏に浮かぶ言葉。それがありありと俺には分かった。きっと父はこれからのことについて計算をしているのだろう。


「大丈夫。大丈夫よノア。例えスキルが1つしかなくてもきっと大丈夫」

「ノア。本当に1つだけか?」

「はい。1つだけです」

「そうか…」


母は慰めの言葉をかけ続け、父は沈黙。俺も沈黙した。


馬車の空気は最悪だった。

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