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寝て起きてを繰り返すうちに、何とか自分の名前は分かった。母(仮)とメイド(?)が良く口にしている単語に反応すると喜ぶからだ。
「ノア」
「あ〜」
「……!………!」
「ママよ」
「あ〜」
「……(うっとり)」
まあこんな具合だが、赤ん坊に1番最初に教える言葉はママ、パパ、赤ん坊の名前と相場が決まっている。それにしても知らない言語だ。何を言っているのかさっぱりだぞ。
生まれた時、あれから少し経って耳の不調も思考力の不調も無くなりつつあった。そして身体は軽く、抑うつ感も無くなったままであった。薬を飲まなくて不安であったが、大丈夫らしい。よかった。こんな如何にも異世界ですよというところでいつもの薬なんてある訳ないからな。
知らない言語。当たり前にある超常現象。詳細は分からないが異世界であるのは確定だな。
ほら今もメイドが何か使ったぞ。何をしたんだ。俺は声を上げ、驚いて見せる。
「あ〜!」
「……?……」
手を伸ばしねだるような仕草をする。もう一度見たいんだ。
「……」
抱き上げられてしまった。違うそうじゃない。
☆
何度もその魔法にリアクションをしていたらようやく分かって貰えて、何度も見せてくれた。その度に俺はキャッキャと喜んでもう1回をねだる。
「もう1回……?」
「あうあっあ!あうあっあ!」
何となく分かったもう1回の単語とジェスチャー(手を伸ばす)をする。すると仕方なしに見せてくれるのだ。それは不思議だった。あっという間に家事が終わるのだ。何をしているかさっぱりだが、一声かければ不思議なエンチャントがホウキや雑巾にかかり、全てをピカピカにしていく。
そして俺に良く見せてくれるのは風だ。見るというか感じるだが、一言呟くとそよ風が手から流れ、俺の顔をくすぐる。それが何とも不思議で、原理がさっぱり分からなかった。
全てを知った気になっていた。何を見ても既視感が邪魔をしていた前世とは比べ物にならない程、今世は未知に溢れていた。
この力についてもっと知りたい。
そう思うのは不思議じゃなかった。俺の身体には活力が漲っていた。