第二話 アビリティ
登場人物紹介
ソラ
今作の主人公。高校2年生。割と真面目で礼儀正しい。でもたまに調子にのる。ちょっと運動神経のいい普通の少年。
ロズ
ソラの魂の欠片。ソラにとっては相棒のような友達。見た目はハリボーのクマの手足が少し長くなってプカプカ浮いてるようなイメージ
バルステア
??????現時点でわかっていることはない。
キラ
ソラが転移したときに善人のフリをしてソラを殺そうとした悪人。生死不明
「うぅ、うーん」
「ソラ起きて!起きて!」
「うわ!今のは、夢か。よかったー。あ、ロズ!おはよう。」
「ずいぶんとうなされていたようだね。昨日のうちに君の持ってる力について説明するべきだったよ。」
「僕の力?なんだい、それ。」
「ほら、昨日キラと闘ったときの炎だよ!」
「あぁ!あのダサい技名の!」
「そうだよ。でもあの技名もあながち間違っちゃいないんだよ。」
「どうゆうこと?」
「君の能力は追憶の保管庫、言ってしまえばソラの記憶の疑似再現みたいな能力だね。」
「そんなの最強じゃないか!」
ロズは少し呆れ顔でソラを見つめた後に言った。
「本当にそうおもうかい?そんなに使い勝手のいい能力じゃないよ。ソラが経験していないことはできないし、あくまでもソラが引き起こした事象じゃないと再現できない。」
「でも、じゃあ昨日の炎や僕が見た夢はどうゆうこと?」
「まず炎はソラがちっちゃい頃行ったキャンプで君がつけた炎、夢は多分、昨日の経験の再現だろうね。
ね、言ったとおり前者は君が引き起こした事象後者は経験した事象だろ。後者の説明としては経験はあくまで自分の身にしか影響がないんだよ。」
「そういうことか~。確かにそんなに強くはないね。僕の経験に依存するだなんて。」
「あともう2つ付け加えるとこの力は生命をどうこうする事はできない。そして力を使うたびに下手すると君の命が削られる。」
「僕の命が?!どういうこと?」
「この世の中の魔法はすべてウルと呼ばれる魂の力をエネルギー源にしてるんだ。だから一度に大量に消費したり持続させると寿命をけずるの。ボクもいってしまえばソラの魂の具象化された存在なんだよ。」
「頭が追いつかないけどだいたいは理解したよ。でもなんでロズは僕の魂の具象化?なのにこの世界のことをそんなに知ってるんだい?」
「それはね、、元の世界でボクのことが見えたかい?見えなかっただろ。だからボクはこの世界に君が入ってから見えた存在、いわばこの世界の住人だからね。」
「そっか、一応聞くけどあっちへの戻り方は知らないよね。」
「ごめんけどボクもそこまで知ってる訳じゃないんだ、ごめんね。」
「いや、大丈夫だよ。これからはどうする?」
ソラはオズには悲しんでいること、落ち込んでいることを悟らせまいと必死に話題を逸らした。
ソラ、落ち込んでる。君のことは絶対ボクが帰すからね。
ソラの気遣いも虚しくオズにはお見通しであった。
「そうだね、これからは一旦夜になる前にここを出て一番近い都市コルニアへ向かおうかそこで寝泊まりする場所を探して作戦を練ろうか。」
「それはいいけど僕お金持ってないよ、」
「それはあっちについてから働くなりして稼げばいいでしょ!」
「そっか、まぁいいや!とにかくその都市に向かおうか!そこまでどれくらいかかりそう?
しかも今まで気づかなかったけどこっちの世界の空、ちょっと赤くない?ずっと夕焼けみたいな。それより黒いけど。」
彼が見上げた先には元いた現実にはありえない薄赤黒く明るい空だった。
「この空もコッチの世界の醍醐味みたいなものだからね。さっきの質問の答えだけど多分今から歩きだせばちょうど夜頃には着くと思うよ。」
「夜、か。こっちの夜もあっちと同じような時間に訪れるなら12時間がタイムリミットかな。あれ?12時間もぶっ続けで歩かなきゃいけないの?食べ物だってないよ!?」
「食料は大丈夫。ほんの極少量のウルを使えば空腹状態にはならないから!疲労にもおそらく同じことがいえるけどやっぱり継続的にウルを使い続けるのは負担になるからなるべく急ごう。」
そう言って2人は歩き出した。
数時間歩いた後ソラは思った。
確かに疲れもしないしお腹も空かないけどなんだか疲れてきたな……
これがロズが言っていたウルの消費による負担か。
ソラは負担を感じながらも歩き続けた。
さらに数時間歩き魂の疲労を感じながらもコルニアへの道を辿っていると半分ぐらい進んだところで魔獣に遭遇してしまった。
「なんだこいつ!これがキラが言ってた魔獣?」
「そうだよ、ソラ。あいつが口にした言葉の中で唯一正しい知識、6人の悪魔が生み出した醜い獣、魔獣!
ソラ、君の能力については説明したでしょ。こいつは足が早いから逃げられない、詠唱は必要ない!何か戦えるものを思い浮かべて!」
そんな!何か、何かないか……
そうだ!この前理科の実験でやった粉塵爆発!
小規模でも多少はダメージを与えられるはず!
問題は某僕が引き起こした事象と僕の追憶の保管庫が認めてくれるか。
でも試してみるしかない!
「ロズ!少し離れて!」
「了解!」
「小規模粉塵爆発!!」
ソラが放った経験は魔獣を仕留められはしなかったが小さくはないダメージを与えられた。
「すごいじゃんソラ!規模が小さいからほとんど使い道はないけど魔獣相手なら使えるよ!ただこれじゃあ決め手に欠けるよ!」
「じゃあ昨日キラに使ったあの技なら!」
「残念だけどあれはキミを傷つけるから使いたくもないしコイツには使えない。」
「どういうこと?なんでこいつには使えないの?」
「魔獣は悪魔に作られたって言ったでしょ?その悪魔の加護のせいで奴らは基本的には属性魔法を無効化できるんだ。」
「そんなのどう倒すの?」
「さっき見たでしょ?ソラの経験魔法ならあいつに通用するんだよ!だから今の爆発を打ち続けるか他の何かを考えて!」
「ええい!こうなったらヤケクソだ!事象の重ね掛け、大量の爆発で消し飛ばしてやる!小規模粉塵爆発×6!」
「いいね、ソラ!ほとんど瀕死まで追い込めたよ!あとは僕に任せな!」
そう言ってロズは何の捻りもなく唐突に普通のパンチを繰り出して魔獣を仕留めた。
それをみてソラ目を見開いて驚いた。
「えー!ロズ!そんなに強かったなら言ってよ!」
「別に強くないよ!僕が君の力を借りずに使える唯一の能力のおかげかな。」
「能力って?」
「それはね、弱者淘汰って言って弱ってる相手にしか効果がないいわば弱点攻撃みたいな能力だよ。」
「確かに弱いかもしれないけど使い方次第では今みたいに絶大な威力を出せるからリーサルとしては十分だよ!」
「そう?照れるな~ってソラ、あぶない!」
オズの視線の先には3匹の魔狼が飛びかかってきていた。
しかし……
「あぶねぇぞ!避けろ!」
そんな声が2人に届くとオズの後ろの林から巨大な暫撃が飛んできた。
オズは声を聞くやいなや状を理解しソラの手を引き共に伏せた。
2人が伏せた先にいた魔狼爪をたて暫撃があろうとなかろうと伏せて避けなければソラは死んでいたであろう。
幸運にも訪れた救い主によって放たれた暫撃により魔狼達は跡形もなく切り刻まれた。
「兄ちゃんたち、無事だったか?」
そう言って林から出てきた救い主は背は高くがっしりとした体格で齢は20ぐらいであった。
彼の元の世界では見ない背格好と低い声はソラを怯えさせてしまった。
さっき僕があれだけ苦戦した魔獣をああも簡単に!
一体何者?
ソラが怯えているのを察知し、オズも警戒を強めた。
ボクらを助けてはくれたけどまだ信用はできない。ソラを守らなくちゃ。
「まぁまぁそう警戒すんなって!実際俺はお前らを助けただろ?何もお前らを傷つけはしないから安心しろって。」
「そうは言うけど名前も明かさない人のことなんてボクは信用できないね!」
「オズの言うとおり助けて貰った事は感謝してるけど警戒は解けない。」
「そうか、そりゃ突然現れて魔獣を一刀両断したら警戒もするか。諸事情で素性は明かせないが俺は信用にたる男だぜ!まぁ信じられないならそれでもいいけどよ、疑われたままっていうのも癪だしお前らどっか目指して歩いてたんだろ。そこまで護衛してやるよ。そしたら信じてくれるか?」
彼の一連の話を聞き終わった2人は少し話合った後これからも魔獣に遭遇してそのたびに苦戦していたらきりがないという考えのもと一旦彼を信用する事にした。
「そこまで言うならそのお誘い、丁重に受けさせていただこうか。いいよね、ロズ?」
「もちろん!ソラの意向のままに!ただ少しでも怪しい素振りを見せたらすぐに全力で相手をするよ。」
「はっ!お前らに俺に勝てるかは甚だ疑問だがいいぜ、俺はそれでも信用を勝ち取ってやる。ところでお前らはどこに向かってるんだ?」
「ボクたちは都市コルニアを目指してるんだ。いろんなことがあって寝泊まりする場所がなくてね。」
「そうかそうか、目的地は俺と一緒だな。もし金がないなら仕事、紹介するぜ。」
「本当?!」
ソラは目を輝かせて言った。
「ソラ、あまり人の好意に甘えすぎないの!有り難いけど断らせて貰うね。」
「分かった!困ったらいつでも言えよ。おっと素性は明かせないが名前は教えといてやろう。俺の名はバルステア、コルニアで困った事が合ったら俺の名前をだしな!多分どうにかなるぜ!」
「ありがとうございます!僕の名前はソラ。よろしく、バルステア!」
こうして2人はバルステアに護衛を任せコルニアへと歩き出した。
先の戦闘によりソラは極度の魂の疲労に見回れていたが他の2人のサポートもあり無事にコルニアにたどり着いた。
「着いたぜ。ここが大陸の西の大国エンバースの中央都市コルニアだ!俺はここに用がないからもう行くぜ。兄ちゃんたちも元気でな!」
そうしてバルステアは颯爽と去っていった。
ロズの目算通りコルニアに着いたのは夜だった。
夜の空は昼間の少し不気味な赤い空ではなく赤黒く少し幻想的な空だった。
コルニアは魔獣の侵入を防ぐために防護壁で囲まれていたが高いビルのような建物が立ち並び一目でここが栄えていることがわかった。
「すごい人!しかもビルみたいな建物もあってまるで日本みたい!」
「でも、実際ここは日本じゃないよ。バルステアの名前を借りるのは最終手段だし早くボクたちは仕事を見つけないと。」
「僕たちって言ったって君は働けないだろ。」
「確かに!ゴメンよ~でもひとまず求人センターに行ってみるか!」
こうして2人は職を求めて求人センターへと向かい募集中の仕事を見てみたが基本的には魔獣討伐の依頼で溢れかえっていてそのほかは低賃金の危険な物しか残っていなかった。
「どうしよう!これじゃあこなせそうなのが一つも無いじゃないか!」
「いやいや、よく見てみなよこれ、これならソラでもできるよ!」
そう言ってロズが提案した仕事はソラにとっては驚くべきものだった。
さて、これからどうなっていくのやら。
ーつづくー
毎エピソード一個の小ネタ!
ソラとロズの台詞の見分け方はソラはちょっと丁寧で一人称が僕
ロズは砕けた感じで一人称がボクになっている。