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Ⅰ大人になる(9)

 転送人がやってくると、村の人々の何人かが世話をして、彼らがこちらの世界に馴染むようにという意味も込めて伝統的な装束を着させ、メイクをさせる。転送人のパートナーも同じような扮装をする習わしとなっている。

 

(仰々しい慣習があるから、運命の相手とか、そういうのと勘違いするのよね)


カメリアとレアルトという二人の転送人がやってきたことにより、世話をする村人たちも混乱していた。今は色々と新しい時代だ。カタルパのパートナーが、男ではなく女である可能性もある。


「おめでとう、カタルパ」


「……ありがと」


「あまり楽しそうじゃないのね」


世話をしてくれるマムは、カタルパにニコニコと笑いかけてくれた。


「万が一に備えて、男女両方の装束を用意しておいてよかったわ」


「用意周到だね。すごいね、マム」


「私は、転送人を迎えるプロだよ。どんな子が来ても大歓迎できるようにする。カタルパに二人もパートナーが来るなんて想定外だったけど、想定外があるからこそ、私もやりがいがあるってもんだよ」


マムは本当に頼りになるし、仕事を生きがいにしていることがよくわかる。始まりの村には色んな人が流れ着く。彼らは、もう他の世界には帰れない。それでも前を向いて生きていけるようにするのが、この村の人間の役割、カミサマから与えられた使命なのだ。


(理不尽な仕事を任されてるんだよな……。でも、ちょっと楽しみなのは否定できないしな……)


カタルパは大人になることが楽しみだった。試練を越えればカタルパに与えられた才能が分かる。アリアやラーナスに守られるだけではなくて、戦えるようになるのだから。

 

 赤いサラサラでキラキラとした装束をまとい、カタルパは気持ちが高揚していた。そして歌い始めた。


風来りて、我ゆかん

与えられし、光求めて

幼き迷いを 振りほどいて

前へと進もう


カミサマのいる世界を

この目で見るため

その恵みに感謝して

私はここに居る


この歌を作った人は誰なのかは知らない。でも、この詩の様な気持ちが今は分かる。誰かに守られる子供のままでいるのは嫌だ。とうとう旅立つときが来た。そのことが嬉しい。




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