Ⅰ大人になる(7)
協力した方が良いに決まってる。だけど、目の前にいるわがままな子と仲良くなるのは嫌だ。そう思って無視したり、適当にあしらってうまくやっていくということもできるかもしれない。でも、パートナーなのだ。試練も、簡単なのか難しいのかよくわからない、が、大事な試練ということ。
カタルパは勇気を出して長老に尋ねた。
「3人だけど、試練は受けられるってことよね?」
「それはそうさね。ヒズミが選んだカタルパのパートナーだからね」
これは、覚悟を決めて仲良くなるしかない。試練が大切なものだというのは、カタルパにしか分からないのだから……。カタルパは金髪の二人に対して手を出して言った。
「私もよく分からないのだけど、一緒に頑張りましょ。私はカタルパ。あなたは?」
「……レアルト」
「カメリアよ」
色々言いたいことはある。でも、それよりも大事なことは、この場の空気をよくすることだ。カタルパは自分の気持ちよりも、もっと大事なことをが分かるようになっていた。
長老の話によると、試練は始まりの村の裏にある森の深淵部にあるとのことだった。渡された地図に書かれているのは、祭壇の祀られている洞窟で、そこは子供だけでは入ってはいけないと言われている場所だった。村にとって森は冷蔵庫で様々な食べ物を供給してくれる場所だったし、子供にとっては遊び場でもあった。
カタルパは、旅芸人一座「子羊座」のメンバーとして、始まりの村を離れていることが多かったから、村の裏の森に行くことは、村の他の子どもに比べて少なかったけれども、それでも祭壇の洞窟ことも、その洞窟から出てくる神々しい、神秘的な空気のことは良く分かっていた。
試練の洞窟は、子供たちが入ることのできない祭壇の洞窟の深部にある。そこは子供たちだけでは踏み入れてはいけないところだったから、アリアが、三人の案内人として付いていくことになった。
村のしきたりでは、試練の洞窟への出発は16歳であればいつでもいいとのことになっている。洞窟での試練は、パーティーによってまちまちなのだけれども、大体2泊くらいである。試練の洞窟の中は不思議なところで、疲れることもなければ、お腹もすかないらしい。そして人間も魔物もいない。