Ⅲ変わりやしない日常(11)
2000年ごろに非正規労働者というのが増えた。アルバイトだけではなく、契約社員や派遣社員という形で働く人たちが現れた。彼らを長期雇用する場合、正社員にしなければならないというルールがあるために、契約社員は3年という契約で働き、契約が終了したら、一旦その職場を離れるということが慣習的に行われるようになった。
その契約社員や派遣社員として働くのは多くの場合女性であったのだが、就職活動でうまく正社員になれなかった人たちも、そういう雇用で働くようになった。契約社員や派遣社員という形態がどんどん当たり前のものになるというプロセスがあった。
やがて、正社員の中で単純労働をしている人、採算の合わない仕事をしている人たちが、契約社員や派遣社員として働くようになった。例えば、図書館司書や企業の主に雑用を担う事務員といった人たちだが、非正規雇用者という条件であることがよくある。また、正規雇用であったとしても、他の場所で同種の仕事というのを基準に給与が支払われるため、たとえ保証があったとしても、安い給料で働かされるということが当然になってしまうのだ。
このプロセスの背後には、インターネットといった情報網の発達というのがある。個人がその情報網を扱う以上に、企業といった複数の人間がいる団体の方が情報網を、扱えるわけで、その網羅されたものから、より集団が有利になるような状況を引き出す。企業が正当な報酬を与えられるという意味ではとても良いのだが、その報酬に手の届かない人間にはとても高い壁を作っているというような状況でもある。学校をドロップアウトしたり、社会からの排除を経験した人間に対して、イレギュラーな存在に対して、蓄積された普通の人間のデータから、適当な、正当な報酬を与えるというのは難しいものだから。




