Ⅲ変わりやしない日常(8)
当たり前なのだけれども、作者は引っかかった。
「結婚してるのに、単身赴任って辛いよな……」
作者の親はとても平凡でお金をあまり使わないし、つまらない家だったけれども、夫婦の仲が劇的に悪くなるということはなかった。良い距離感を取ってやっていたというか。……親は、うまくやっているけれども、なんかそうでもないところの方が多いらしい。
そりゃそうだ。20代という若い時に決めた生涯の伴侶というのが一生のしかかってくるのは、確かに辛いわなとも思う。まぁ、そう思った。実際、大学や職場で同年代の男性と出会う機会はあったけれども、一緒に暮らせるとか、特別な誰かが見つかるなんて思わなかった。友達だから、許せる。そういう奴ばかりだった。結婚なんてあこがれもしなかった。
パートナーが欲しいという欲がない上に、子供なんて考えたこともなかった。子供を持つことで、自分の生き方が制限されるというのはもっと怖かった。
ふと、EX-Shoppingビルの13階の方を見た。Aさんと、Bさん……。
高校生というのは、作者にとっても子供であってもおかしくないくらいの年齢である。もしも自分に子供がいたとして、麻薬を使っているなんてわかっていたら、……そりゃあ、怒ったり更生させたりするわな……。
「私には分からない話だよ」
壊れていっているのに、誰も気にしない。いや、気にするというのが野暮な気がするのだ。
だって、他人の家に干渉することになるだろう。高校生に麻薬を使わせるような状態って、どんなにひどい家庭なんだろう。そもそも、そういう家庭しか築けないような人間が子供を産んでいるってことだろ。
覚悟がないカップルに子供を産ませるなんてどうなんだ、とは思いながらも、それは、作者の選択であって、他人に押し付けるものではない。子供を産んでいない人間に何か言えるような立場じゃない。
「だけどな、クソガキ育ててるのは、あたしの税金でもあんだよ」
作者は振り絞るように言った。




