Ⅲ変わりやしない日常(5)
その日は、九月一日だった。一番自殺が多い日だそうだ。
新学期が始まる日。……絶望が始まる。そう思う中高生がたくさんいるらしい。
「こちら現場のEX-shopping ビルです。ビル13階から、女性2人が転落した現場です」
2人は高校生だった。麻薬が検知されて、2人は精神的に異常な状態だったことから、それは特別な自殺として報道された。
高校生が麻薬を手に入れていること自体おかしいから、その2人の高校生は「異常」な高校生として扱われる。そしてその「異常」が存在する今の日本社会のことを嘆くようなコメンテーターの意見が展開された。
自殺の連鎖が起こらないように、その報道は極力抑えられたものになっていて、それに対して作者は抵抗を覚えて、現場のEX-shoppingビルに向かうことにした。
向かう途中で、なぜ自分はそこに向かっているのかと考えているとふと一つのアイディアが浮かんだ。
「ああ、花を買って行こうか」
ごく自然に覚えた感情だったのだけれども、財布の中に入っているのが千円札だけだったので、止めた。お金がないのに、わざわざ電車に乗って現場に向かっているだけで、作者は律儀なのだ。テレビで知った2人の少女を弔いに行くのだから。
現場には、いくつかの花が置かれていた。
(まぁ、ラリった高校生なわけで、関わりたくない人も多いだろうな)
通常の交通事故の後とかで見るような量の花ではなかったのは、麻薬で正常ではない状態で飛び降りたという事実がそうさせたのだろう。
手を合わせて冥福を祈った。




