Ⅲ変わりやしない日常(4)
梓、椿、貴。その三人は作者がまだ幸せな人生を送っていたころのノスタルジーから、生まれている。
中学生、あの頃は、無邪気に……違う、結構嫌な時代だった。
高校受験が厳しくて、それなのに、部活もあってなんだか忙しい日々だった。
部活は、バレーボール部だったけれども、あまり好きじゃなかった。
入らなければならないから、入った。そういう部活。
もちろん、バレーボールが好きで大きな大会に出たいから、本気で練習している人たちもいた。
だから、嫌だった。モチベーションが違うのだもの。合わせていくなんて苦痛なことはない。
合わせるというのは、自分の気持ちに嘘をつくことだ。
何で自主活動のために、自分を欺かないといけない?
でも、親はバレーボールが好きな作者という像を描いていて、
毎日を充実させているということを期待していた。
期待に応えられる。そう思っていた時代だった。
中学生の頃は、期待されるのがうれしくて、でも、反抗期で親には良くない態度を取っていた。
自分の気持ちを親に悟られるのは嫌だったけれども、SOSを出したいという気持ちもあった。
梓という車いすの少女をわざわざ描こうなんて思ったのは、何でだろうか。
多分きっと、「できない」と言える自分になりたかった。
そういう思いを抱いていたからかもしれない。




