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Ⅱ旅が始まる(13)

 コールセンター以外で働いたこともある。運送業の仕事だった。年末の歳暮の時期だ。


 仕分けの作業で、クソ寒い倉庫が職場だ。朝6時半に集合で、その日の9時からの便に間に合わせるために暗い中を自転車で倉庫まで向かった。

 この仕事も、社会保障はない。その癖にもともと公共事業だったというのもあって、その会社の正職員は妙な余裕があって非正規雇用のバイトに対して横柄だった。


「何でこんなことも出来ねぇんだ」


 社員の罵声があった。荷物をお客様の元まで運ぶ運送屋はその会社の下請け会社で、その下請け会社の社員のミスに対しての罵声だった。

 

 嫌な会社に来てしまった、と思った。


 色んなバイトをした、塾講師のバイトもした。言われた通りの授業をしたらつまらないと言われた。

声が小さく、抑揚がなくて話が分かりづらい。


 マニュアルは分かりづらいのに、社員は教えてくれない。社員かと思ったら、契約社員だったらしい。ほとんどが非正規雇用の人件費を抑えに抑えた会社だった。その塾は、首都圏で大成功を収めており、社長は、やり手経営者で、雑誌のインタビューなんかでほくほくとした顔をしていた。


 末端の塾講師のことなんてこいつは知らない。

作者は、現実世界に生きているはずなのに、同じ会社の偉い人はファンタジーの世界に生きる異世界の生き物だった。


 


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