Ⅱ旅が始まる(9)
そこにレアルトがニコニコとした顔でやってきた。インディゴの見立ての冒険者の格好がとても気に入ったらしい。自然に染められた茶色で、麻のような素材のシンプルな上下に金属の胸当て、腰巻……RPGのコスプレみたいだ。
「すごいだろ、これ、無茶苦茶軽いんだ」
(昔から知ってるけど、コイツ、心を開いたらすぐになびくよな、チョロいな……)
楽しそうなレアルトを見ながらカメリアはうんざりとした。
そこにカタルパがやってきて、カメリアの顔を見て言った。
「ねぇ、椿ちゃん」
「……ッ。何でその名前」
カメリアの顔が真っ赤になった。カタルパと梓の声はほぼ同じだし、名前を呼ぶイントネーション、息遣い、質感も同じなのだ。特別な感情を抱いている対象である梓に名前を呼ばれたら、動揺してしまうのは仕方のないことだ。
「ほんとに、お前は梓にぞっこんだな」
「だって……歌ってるの見ると、凄くドキドキして……」
顔を見られるのが恥ずかしくて、カメリアは突っ伏した。
「こうしてると、可愛いよな、カメリア」
「もう、やだぁ」
そこにフクシアが割り入ってきた。
「はいはい、これくらいにしときな」
フクシアが来ている服は、中欧の民族衣装のような服で布面積がしっかりとある服だ。
「ちょっと、なんでこの人はちゃんとした服を着てるのに、ヒラヒラの服しかないとか言うわけ」
「それは、同じ服を着てんだよ。同じものを着てれば、いつも同じ服を着ている人。目立たないだろう。それに自分の戒めにもなる」
「戒め?」
「魔法が使える。そういう強い立場にある人間は、そういう人間として謙虚に生きるのがちょうどいいんだよ。アンタは違う考え方なのかい?」
「……分かんない、そんなこと考えたことないもの」
「じゃあ、考えることだね」
「……でも、勉強はしてきた。ちゃんと就職してお金を稼げるようになるために」
「それは、良いことだったのかい?」
「え……」
「勉強することは良いことだけど、お金を稼ぐことだけを目的に勉強してきたのかい? 必要以上のお金を持つ必要はないんだ。何かが足りない、そういう状況でちょうどいいんだよ」
フクシアは含蓄のありそうな話をした。




