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Ⅱ旅が始まる(5)

 インディゴとフクシアの前で、レアルトは困っていた。


「それで、お前は一体何が得意なんだい?」


「えっと……。パソコンです」


「パソコン……、知ってるかいお前さん?」


「あー、他の人と通信する箱だよ」


インディゴは日本の事情のことを知っているらしく、フクシアに説明してくれた。


「だが、パソコンはこの世界にはないよ」


そう言われて、レアルトは自分の無力感を突き付けられたような気がした。

住んでいた町の中で、勉強のできる優秀な中学生であった。田舎の街だったけれども、インターネットで通信講座を受けていたから成績は良かったし、答えの入力をするためにパソコンは得意だった。もちろんタイピングも速い方だ。


「それで、お前は何ができるんだ?」


パソコンのない世界。この世界でこう尋ねられると、レアルトは背筋が凍った。

レアルトは、勉強は得意だったけれども、運動はほどほどだったので、体力に自信がなかった。


「あの……。体育は苦手なんですが、国語と英語は得意で……。理科と数学はそれなり……、みたいな」


フクシアは日本のことをあまり知らない。だから、レアルトが教科のことを話していても、あまりピンとこなかった。インディゴが代わりに言った。


「まぁ、要するに教室でテストの勉強はできたってことだな」


インディゴはレアルトの日本での状況を大体理解した上で尋ねた。


「数学はそれなり……。じゃあ、算数はどうだ?」


「算数ですか? 小学校の勉強は得意だし、完璧っす。えっと、計算とかそういうのも得意だし、好きなんすけど……。数学はちょっと……証明とか……覚えきれない」


レアルトは図形の証明問題が出てきた辺りから数学の成績が下がる、典型的な面倒くさがりの中学生だった。それでも、トップを争える成績だったのだから、客観的に見て悪い成績ではない。そういう中学校での状況については、あまり気にせずインディゴは言った。


「なら、フクシア、こいつは商売はできる。金のやり取りは任せられそうだ」


「商売?」


「そうだ。金を正しく交換できるか。釣銭をちゃんと正確に返せるか。これは重要なことだぞ」


「それくらいなら、誰だって……。俺、頑張ります」


「良い気構えだ。頼むぞ、他の生きるために必要なことは俺が教えてやる」


レアルトは眼をキラキラとさせて、頷いた。


 

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