Ⅰ大人になる(38)
「僕だって、年増の女に興味があるわけではない。だけどな、女がいねぇんだよ。ガキは居るよ。けどな、やっと大人になってきたかと思ったら、いなくなっちまう。ガキを女として見るのは犯罪だからやらねぇが、デカくなってきたころにはこの町にはいねぇ。ここにいたところで結婚も楽しい家庭もなにも望めねぇ……。俺は失敗作なんだよ。まともな人間になれなかったスクラップだ。だから、こんなゴミみたいな町に捨てられる。観光案内所? ふざけんじゃねぇ。こんななんにもねぇ街に誰が来るんだってんだ。高校生になったらみんな出ちまう街に、誰が楽しみを抱くってんだ。どんなにもがいても、エンターテイメントは街には勝てねぇ。自然を楽しめる? ふざけんじゃねぇ、人間の踏み入れていねぇ自然に気楽に入れるはずがねぇだろう。住んでる人間が整備するから、自然の恵みが得られるんだ。なんも分かってねぇ、馬鹿どもが」
徐々に三屋の顔は曲がっていき、どんどん醜悪な顔になっていった。
それは、三屋そのものではなくて、彼の心の叫び……。
元来の彼ではなくて、彼に向けられたような言葉、それは直接だったりインターネットというメディアを経由してだったりのものだったりするのだけれども、それが三屋という人間を怨念のような姿に変化させていった。
椿はその姿を見て、息を吸った。抵抗したい感情だった。
でも、それは強大な力を持っている。
下を向いたとき、椿は自分の左の手のひらに温かみがあるのを感じた。
一人じゃない。他にもいる。
その温かみの主を見て、わかったんだ。
椿、梓、貴がいる。そう、即ち、カメリア、カタルパ、レアルトの三人で、その同じ光景を見ていた。
椿、カメリアが不安そうに貴、レアルトに眼差しを向けると、彼は、椿の手を一瞬強く握ってくれた。
大丈夫。そう言ってくれるような頼りがいのある温もりだ。




