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Ⅰ大人になる(37)

 街の高校は主に就職する人向けの高校だった。家の仕事、農家とか小さな会社で働くとかそういうことを狙っているもので、大学進学を狙うのであれば町の外の高校への進学を目指す。それは学校のシステムだから仕方のない話だ。椿と貴は、大学進学を狙えるような優秀な中学生だったから、高校生になれば街の外の進学校に行く、即ち家から離れた場所に住まいを持ってそこから学校に通うということを考えていた。


 15年くらい前までは、電車とバスを乗り継いで行ける範囲に高校があったけれども、過疎化で生徒減り、廃校になったし、また電車は廃線になって通うということは難しくなった。そういう町なのに、いや、そういう町だからこそ白虎塾は地域のニーズに応えた指導をしている。白虎塾はこの地域の唯一の塾であると同時に、こういう小さな町に合わせられるノウハウを持っていて、それで小さいながらもフランチャイズみたいになっている。


 その基幹校、本校は進学校の高校がある街にあって、この町に派遣される塾の先生は多くの場合、本校で仕事することだったり、白虎塾での経験を元にもっと大きな町の塾だったり、大手塾の講師になることを夢見ていたりする。


 椿と話をするために、三屋のいる観光案内所にやってくる瓜生先生もその類の人だった。こんな田舎町の生まれではないのだけれども、それなりのレベルの四年制大学を出て、関東圏の大都市で就職しようとしたものの失敗し、地方中堅塾の白虎塾に入社した。若いころは上昇志向が強く、同年代の講師たちと競争をするように塾生たちの合格実績を上げていたが、女性だということもあって、会社で認められることはなかった。


 30を超えて、自分の上昇する限界を感じて、足るを知るようになって、かえって周りからの好感を得られるようになったのだけれども、



 三屋にとっては、滅多にいない上物の若い女である。大学を卒業していて、頭はいいし、何せ性格が悪くない。三屋としては、好きなのだけれども、彼女からは全く相手にされていない。瓜生先生は年上や同年代の頼れる男性を求めていて、三屋という年下はそういう対象として見ていないのだ。だから、思いを告白するなんてことはできない。この状況を三屋は絶望的状況だと思っていた。



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