Ⅰ大人になる(29)
カタルパの前にレアルトが現れた。
誰もいないところに彼が現れたから、不安が払しょくされて嬉しかったのだけれども、
どんな風に声をかけて良いのか分からなかった。
「お前も、そんな顔をするんだな」
レアルトにそう言われて、もう一つの世界と、この世界が繋がった。
誰にも迷惑はかけたくない、嫌な気持ちにさせたくない。
だから、いつも笑っていた。いい子であり続けた。
脚がみんなの様に動かないだけ。
ただ、それだけなのに、みんなに分かるんだ。
普通の人とは明らかに変わっているから、障害者って呼ばれる。
別に、そんなのはどうでもいい。
呼ばれることなんてどうでもいい。
脚が動かないというのをみて、それに対して憐みの目を向ける。
当たり前の感情だし、当たり前の行動なんだ。
だから痛い。
差別するなとかそういう善行があるのは悪いことじゃない。
でも、その善行自体の存在が差別があることを示している。
だったら、こっちだって戦略がある。
障害者、そんな括りで見られる世界、その世界にいなければなかった梓。
梓はいつも笑っていた。
いい子であった。
そうすることで、彼女は、良い障害者になれるから。




