Ⅰ大人になる(26)
街の芸術祭の後は、ちゃんと勉強する。
そういう約束でそれまでの間は好きにしていいということにした。
椿と貴で、凄い映像を作って梓の舞台を盛り上げる。
椿は映像担当、貴は音響担当。
2人の勢いがすごくて、大人たちは折れざるを得なかった。
それが終わった後、白虎塾に通い、優秀な高校に入学して、白虎塾の実績に貢献する。
優秀な高校に入って、良い大学に行く。
2人はそういう安定した人生をたどることのできるような才能があった。
そういう敷かれたレールに沿って生きていくよりも楽しいこと、
それが、梓のプロデュースをするそんなことだった。
彼女は普通の人の様に動くことができないけれども、
VRの世界なら自由になれる。
そこに歌声が乗れば、みんなの心を揺るがすようなことができる。
その歌い手は身体障害者なんだ。
でもそれを開示するのは、梓がたくさんの人に注目されるようになってから。
2人は、世界に対してインパクトのある事ができるとワクワクした気持ちで
作品に取り組んでいた。
そんな時に、
梓は、道端で倒れて死んだ。
父親はその日出張で泊りで、母親しかいなかった。
車で買い物に行っていたから、梓は家に一人で居た。
「どうしてよ。どうして……」
「いやぁぁぁぁ」
「梓は外に出てるの、絶対におかしい」
その知らせを聞いて、椿は泣き叫んだ。
色々な言葉が彼女から飛び出した。
貴が泣かなくてもいいくらい、椿がたくさん泣いてくれた。
梓がもう長くないことは知ってた。
先に死ぬのは分かってた。
でも、その時を受け入れるのは難しかった。




