Ⅰ大人になる(17)
梓は生まれつき脚力が弱くて、小学校の時も、第三中学校に入ってからも、いつも梓のクラスは一階をあてがわれることになっていた。小学校の頃から、3人は同じ学校で、小学校の高学年になった頃から、椿と貴が梓の世話をする感じになっていた。
「成績が落ちるから、梓の世話係につくなって。マジでふざけるなって感じじゃない」
「確かに。誰に言われたの?」
「親。来年は受験生なんだし、勉強に集中できるようにしなさいって」
「……ああ、そういやぁ、成績落ちたんだっけ、椿。だったらしょうがねえんじゃないの?」
「確かにそうだけど……。でも言い方とかあるでしょ。別に成績が落ちたことを咎められるのは構わないけど、何で梓の話まで出てくるのよ」
「まぁ、椿の母さんは、学歴コンプレックスあるみたいだからな」
「コンプレックスとかどうでもいいのよ。どうして、梓のお世話をしたらダメなわけ」
椿の性格がツンデレでややこしいことを貴は知っている。お世話係という役割が与えられているから、椿は梓の傍にいることができる。そういう理由をつけている。
「……めんどくせぇやつ。世話係ってのはおかしくない? 大好きだから、一緒にいるって言ってやればいいんじゃね」
貴に言われて、椿は顔を赤くした。
「なんでそんなことば言えるのよ」
「そんなことば?」
貴はニヤニヤ笑いながら、椿を見ていた。




