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Ⅰ大人になる(16)

(私の名前は、梓。第三中学校、2年3組……)


現代日本の公立中学校の教室、その廊下側の席でカタルパは座っていた。

この世界での名前は梓、目の前には掃除箱、黒板があってそこには日直の名前が書かれていて……。


 キンコーンカーンコーン……。

チャイムの音を聞いて、梓は周りを見回した。


「チャイムよチャイム。梓、次の時間は教室移動でしょ」


「あ、えっと……。カメリアちゃん?」


梓の席にやってきたのは、真っ黒な髪のカメリアだった。彼女の名前のことを違う名前で呼んでいた気はするけれども、確証がなくて梓は首をかしげて尋ねた。


「何言ってんの、私は椿、つ、ば、き」


始まりの村の村人たちに書いたサインの名前だ。

椿は、制服をきっちりと着ていて、真面目できつそうな少女だった。


「椿ちゃん、だよね」


椿、その名前を口にすると、梓は心が温かくなるような気持になった。

梓が笑いかけると、椿はプイと身体をターンして少し離れたところに行ってしまった。

追いかけようと思っても、梓は追いかけられなかった。梓の脚は、不自由だったから。


装具があれば歩くことはできたけれども、装具があっても普通の中学生のような速さで進むことができない。なので、急ぐ時は車いすを使って移動をした。


(そっか、踊ったりできないのか……)


梓は恨めしそうに脚を見た。そこへ男子生徒がやってきた。


「じゃあ、行こう、梓」


「ちょっと何でアンタが来てんのよ、貴」


椿はまた梓のところに戻ってきて、貴に文句を言った。彼は髪の黒いレアルトだ。


「……えっと、貴ちゃん、ありがとう」


梓が貴に笑顔を向けると、椿は口をへの字に曲げた。


「いいのよ、こいつにありがとうなんて言わなくても」


「でも、貴ちゃん、優しいし……。椿ちゃんも優しいし……」


お世辞やおべっかを使っているわけではなくて、梓の心からそういう感情が湧いてきて、それを素直に表現した。


(マジで可愛すぎる……。梓、マジで、マジで、可愛い……)


椿の心からもそういう感情が湧いてきて、でもそれを素直に出すのは恥ずかしいし、そう思っているのがばれるのは嫌で、極力二人に顔は見られないようにしていた。


「貴、アンタちゃんと丁寧に押してあげなさいよ」


「はいはい」


貴は、椿の扱いに慣れていた。


 椿と貴は、学級委員を務めていて、いつも梓の面倒を見てくれていた。2人は成績が良いが、人見知りのオタク。学級委員だから、先生から任されているというのもあるのだけれども、2人は積極的に梓に対して優しく接してくれていた。




 


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