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Ⅰ大人になる(13)

 アリアとルードから離れて、なんとなく辺りを歩いた。もう夜だった。魔法で明かりが灯されているから、真っ暗ではないのだけれども、森の方は真っ暗だし、寂しい。宴席の行われている小屋あたりは、光が強くて、眩しい。明日からは試練に出かける、即ちあの真っ暗な森で過ごすのだ。試練が終わるまで何日かかるか分からないような時間を闇の中で過ごす。


「大丈夫、二日くらいで終わるって、皆言ってたし」


1人になったから急に暗い気持ちになったのだと思う。風も冷たい。その風で揺れる木々の音も不気味に聞こえる。でも、空を見ると星が見えた。暗いからたくさんの星が見える。


「良いのか、宴にいなくて?」


1人で地面に座っていたカタルパに声をかけたのは、「子羊座」の魔物使い、ラーナスだった。


「おめでとう、カタルパ」


「何が?」


「16歳の大人記念」


「まだ、試練越えてないけど?」


「じゃあ撤回。戻ってきたときに言うよ」


ラーナスは2年位前からずっと旅をしている。アリアはその少し前から一緒に旅をするようになった。「子羊座」はフクシアとインディゴの夫婦を中心にやっている芸団で、2人は一緒に試練を越えたことにより夫婦になった典型的な始まりの村の夫婦だ。

 2人の間には子供が居なくて、身寄りのないカタルパを自分たちの子供の様に育ててくれた。


「インディゴもフクシアもいないから、気にしてなかったけど、「子羊座」で祝ってくれる人、アリアしかいないんだもの。酷いよね」


「……俺は無理だからな」


「ずっと気を張ってなきゃいけないって大変じゃない?」


「いや、別に。酔っぱらって前後不覚にならなければ、問題ない。宴に行けば飲む羽目になるだろ」


今、「子羊座」を移動するのに使っている獣車は、ラーナスが服従の契を結んでおとなしくさせている魔物を使っている。ラーナスは人づきあいが良い方ではないから、魔物の世話を理由に宴に参加しない。魔物は恐ろしいものだけれども、服従の契を結んだ魔物はおとなしい。カタルパは、その魔物が暴れたり、人を襲ったところを一度も見たことがない。



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