8話『リナーシャ視点:気に入らない男』
私は主様の為だけに生まれた存在。
だからこそ私にとって主様は全てであり、
生きる意味そのもの。
それ故に主様の為であれば何だって出来る。
主様に尽くす事こそが私の生き甲斐だから。
だけど。1人の赤子を拾ってから主様は別人のように
変わった。
今まで感情を一切表に出さなかった主様が感情を
表に出すようになった。
それはまるで子を持った1人の母親のようだった。
正直それが良い事か悪い事かは分からない。
だけど。主様は生きる意味を見つけたかのように
生き生きとしていた。
私はそんな主様が幸せそうに思えた。
その一方で。私は赤子に嫌悪感を抱いた。
その赤子の存在全てが私の神経を逆撫でした。
それ故に赤子の頃から気に食わなかった。
それなのに。そいつはあろう事か。
私の役目までも奪おうとして来た。
だからこそ私は幾度となくそいつを叩きのめした。
二度と主様を守りたいと思わぬよう徹底的に。
それでもそいつの心が折れる事は無かった。
現に今も私の蹴りを受けて肋が折れているにも関わらず、
そいつは立っていた。
それ程までにそいつは主様の事を守りたいと
思っているのだ。
そんなそいつの姿を見る度に虫唾が走ってしょうがない。
どう足掻いてもお前如きの力では主様を守れない。
足掻くだけ無駄だ。
だと言うのに。一向に諦めようとしないそいつに
苛立ちを覚える。
「本当にどこまでも気に入らない。」
そう忌々しげに私は吐き捨てた。
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