7話『オネット視点:諦めない』
眠っていた最中に殺気を感じた俺は即座に意識を
覚醒させ、俺目掛けて飛んで来たものを回避する。
俺は冷や汗を額に滲ませながら先程までいた場所を
視認する。
するとそこには一本のナイフが突き刺さっていた。
「良い加減。ナイフを投げるのは辞めてくれません
かね?」
「余りにも貴方の存在が不愉快だったので。
反射的にナイフを投げてしまいました。」
悪びれる様子もないその人に俺は思わず溜息を吐く。
銀髪に翡翠色の瞳を持つ女性の名はリナーシャ・メイデン。
リーシェの専属のメイドだ。
だが俺は何故か彼女に嫌われていて。毎度の事のように
殺され掛けている。
「そういえば。昨日見掛けませんでしたけど?
何処かに行かれていたんですか?」
「貴方に話す義理はありません。」
そう告げるリナーシャさんからは殺意が滲み出ていた。
身の危険を感じた俺は話題を切り替える。
「それならいつも通り特訓に付き合って貰えませんか?」
「はぁ…本当はすこぶる嫌ですが。主様からは
貴方の力になるよう言われていますし。
仕方ありませんね。」
本当に嫌そうにリナーシャさんは顔を顰めながら
家の外に出る。
俺もリナーシャさんの後を追うようにして家の外に出る。
それから俺達はいつも特訓場所にしている
湖の辺まで移動する。
ここなら多少暴れても問題はないだろう。
そんな事を思いながら俺は腰に差していた剣を抜き取る。
リナーシャさんは俺と充分に距離を取った後に手招きする。
俺はそれを合図に地を蹴り、リナーシャさんに
剣を振るう。
だがリナーシャさんは即座にナイフで剣を受け止める。
「《剣王の加護》を持っているだけの事はあって。
剣の扱いは長けていますが。
精度ははっきり言ってゴミですね。」
そうばっさりと切り捨てるとリナーシェさんは
俺の鳩尾に蹴りを入れる。
「がはっ…」
諸に攻撃を受けた俺はその場に膝を突く。
恐らく今の攻撃で肋も折れてしまっただろう。
「本当に弱いですね。そんなんだから
主様を守れないんですよ。」
俺は痛みに耐えながら何とか立ち上がる。
「リーシェの足元に及ばない事ぐらい。
理解してますよ?それでも俺はリーシェを守りたい。
だからこそ俺は絶対に諦めない。」
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