9話『グロード視点:届かぬ想い』
主様の言葉に僕は思わず息を呑む。
「勇者じゃない?」
どうゆう事かと僕が首を傾げていると。
主様は間髪入れずに答える。
「本来ならあの子は勇者として生まれる筈じゃ
なかった。だからあの子は勇者の器じゃない。」
「つまり。彼は勇者としての適正が無いのにも関わらず。
勇者に選ばれてしまったという事ですか?」
その問いに主様は頷く。
「そうゆう事になるわね?」
「なら――」
「でもそれは現時点での話。」
その言葉に僕は思わず首を傾げる。
「現時点での?」
「あの子が勇者である事を証明出来れば。
自ずと世界はあの子を勇者として認める。
そうなれば。あの子は真の勇者として覚醒を遂げる。」
そう興奮気味に主様は告げる。
その言葉に僕は純粋に思う。
(やっぱり。この人。生粋の親バカだな。)
主様は事ある事に彼の自慢話をしてくる。
それはもう耳に胼胝が出来るくらいには。
だけど。彼の話をしている時の主様は本当に幸せそうで。
その度に彼に嫉妬していた。
(あいつなんかよりもずっと僕の方が主様の事を
慕っているのに。何で?)
そんな事を心中で吐き捨てながら僕は唇を噛み締める。
そんな事聞くまでもない事くらい。
僕自身も理解している。
それでも思わずにはいられなかった。
(僕だって主様の事が好きだ。だけど。
今日彼を見て思ってしまった。
僕では到底彼には勝てない。
僕が敵う相手ではないのだと。
そう実感させられた。)
それが途轍もなく悔しかった。
(僕は主様に命を救われた。だからこそ
彼女の為だけにこの命を使うと決めた。
まさしく主様は僕にとって生きる意味そのものだ。
それが変わる事なんて絶対にないと。
そう言い切れる。)
だけど。彼の決意はそんな僕の決意が霞んでしまうくらい。
凄まじいものだった。
それに正直に言ってあの戦いは勝てる勝負だった。
それなのにも関わらず、僕は彼に負けてしまった。
それ程までに彼は主様の事を愛しているのだと。
そう思い知った。
だからこそ悔しかった。
「主様が彼を気に入るのも分かる気がします。
彼は本当に魅力的ですから。」
「そうね。でもだからこそ負けたくないとそう思わない?」
その言葉に僕は息を呑む。
「それは…」
「別に負けを認める事は悪い事じゃない。
でもそれで諦めたり、投げ出すようなら。
一生あの子には勝てない。
大事なのは最後まで諦めない事だから。」
そう告げる彼女を見て堪らなく愛おしいと思う。
だからこそ――
(好きですよ。主様。)
そんな事を心の中で思うのだった。
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